最初に
釣った魚をどう冷やすか――これは「味」と「鮮度」を左右する最重要ポイントです。
同じ氷でも、「真水氷」と「海水氷」では仕上がりがまるで違います。
その理由を一言で言うなら、「浸透圧(しんとうあつ)」です。
目次
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浸透圧とは何か?
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魚の体液と海水の塩分バランス
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真水氷で起こる浸透圧ショック
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海水氷が魚を守る理由
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見た目・味・鮮度の実例比較
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科学的根拠と最適な冷却法
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まとめ:魚に優しいのはどっち?
浸透圧とは何か?
浸透圧とは、「水分が塩分濃度の低い方から高い方へ移動する力」のことです。
つまり、濃度を均一にしようとする自然の力。
魚の体液には約3%の塩分が含まれています。
一方で、
・海水:塩分約3.5%
・真水:塩分0%
この差が、魚の細胞に大きな影響を与えるのです。
魚の体液と海水の塩分バランス
魚は海水中で生きているため、体内の塩分濃度もほぼ海水と同等。
そのため、海水中では浸透圧のバランスが取れています。
しかし、魚が死んでしまうと細胞膜が弱まり、浸透圧の変化に敏感になります。
このとき真水(塩分0%)に触れると、急速に水分が体内へ流れ込み、細胞が膨張・破壊されてしまいます。
真水氷で起こる浸透圧ショック
真水氷に魚を入れると、以下のような現象が起こります。
・細胞が破壊され、身が白く濁る(白濁現象)
・細胞内のたんぱく質が変性し、食感がぼそぼそになる
・水分が浸み込み、ドリップ(液汁)が出やすくなる
・旨味成分(イノシン酸・グリシンなど)が外に流れ出る
結果として、釣りたてでも「水っぽい」「味が薄い」「見た目が悪い」という状態に。
つまり、真水氷は冷却力はあっても、魚の細胞にダメージを与えてしまうのです。
海水氷が魚を守る理由
海水氷は魚の体液に近い塩分濃度を持つため、浸透圧差がほぼありません。
これにより、細胞膜が壊れず、身の中の水分・旨味を保ったまま冷却できます。
さらに、塩分によって氷点が下がるため、海水氷の温度は約-1.5℃。
真水氷(0℃)よりも早く、やさしく冷やすことができます。
その結果:
・白濁しない
・ハリのある身質
・艶のある皮目
・旨味が逃げにくい
海水氷は「低温×浸透圧バランス」で、魚にとって理想的な環境なのです。
見た目・味・鮮度の実例比較
| 比較項目 | 真水氷 | 海水氷 |
|---|---|---|
| 塩分濃度 | 0% | 約3.5% |
| 浸透圧差 | 大きい | 小さい |
| 細胞破壊 | 起こる | 起こりにくい |
| 見た目 | 白く濁る | 透明感を維持 |
| 食感 | 水っぽい・柔らかい | しっとり・締まる |
| 味 | 薄い | 旨味保持 |
| 鮮度持続 | 短い | 長い |
釣太郎の比較実験では、海水氷で冷やした魚は12時間後でも透明感を維持。
真水氷では3時間後に白濁・ドリップ発生という結果が出ています。
科学的根拠と最適な冷却法
魚の細胞は、外部との浸透圧差があると「水分の移動」が起こります。
これを防ぐには、体液と同じ塩分濃度で包み込むことが最も効果的。
理想的な手順
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釣り上げた直後に血抜きを行う
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海水氷を作る(海水:氷=7:3)
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魚を完全に沈める
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-1〜0℃をキープして持ち帰る
この方法であれば、魚の細胞構造を壊さず、旨味・香り・色艶をそのまま維持できます。
まとめ:魚に優しいのはどっち?
真水氷=冷却力はあるが、浸透圧差で細胞を壊す。
海水氷=冷却力+魚体に優しい浸透圧バランス。
つまり、**「魚を冷やす」ではなく「魚を守りながら冷やす」**のが海水氷。
この小さな違いが、刺身で食べたときの旨味・歯ごたえ・色艶に大きく影響します。


