磯釣りの世界で、昔から語り継がれる一つの鉄則があります。
「石鯛釣りでは、朝まずめにピトンを打ち込む音は御法度」
静寂に包まれた朝の磯に、金属音を響かせることは釣果を遠ざける最大の要因とさえ言われています。
では、同じ磯を舞台にするエギング(アオリイカ釣り)ではどうなのでしょうか?
結論から言うと、アオリイカは石鯛ほどピトン打ちの音に敏感ではありません。
今回は、なぜ魚とイカでこれほどまでに反応が違うのか、それぞれの生態や習性を交えてその理由を解説します。
なぜ石鯛釣りで朝のピトン打ちがNGなのか?
石鯛は「磯の王者」とも呼ばれるターゲットですが、その名の通り非常に賢く、警戒心が極めて強い魚です。
特に、捕食活動が最も活発になる「朝まずめ」の時間帯は、彼らがエサを探して浅場に差してくる絶好のチャンス。
このタイミングで磯にピトンを打ち込むと、
- 金属音と振動が響き渡る 岩場を通じて、「カン!カン!」という甲高い金属音と振動がダイレクトに海中へ伝わります。
- 石鯛が危険を察知する 石鯛は側線(そくせん)という器官で水中のわずかな振動や音を敏感に感じ取ります。自然界にはない金属音は、彼らにとって最大の危険信号です。
- 警戒して捕食をやめる 危険を感じた石鯛は一気に深場へ避難したり、エサ場に出てこなくなったりします。一度警戒モードに入ると、その日はなかなか口を使ってくれません。
つまり、朝一番のピトン打ちは、自ら「これから釣りをしますよ!」と魚に知らせて、
ポイントを潰してしまう行為に他ならないのです。
ベテランの石鯛師は、夜明け前に静かに釣り座に入り、まず仕掛けを投入して場の様子を見てから、
必要に応じてそっとピトンをセットします。
一方、アオリイカへの影響は?
では、アオリイカはどうでしょうか。 アオリイカも物音に驚くことはありますが、
石鯛ほど致命的な影響はありません。
その理由は、彼らの感覚と習性にあります。
- 優れた視覚に頼るハンター アオリイカは非常に目が良く、主に視覚を使ってベイト(小魚)を追い詰めるハンターです。音や振動よりも、「見えるもの」への反応が非常に強い生き物です。
- 好奇心が警戒心を上回ることも 特に秋の新子シーズンは好奇心が旺盛で、エギという異質なものに果敢にアタックしてきます。突然の物音に一瞬散ることはあっても、目の前に美味しそうなエギがあれば、捕食本能が勝って再び抱きにくるケースがほとんどです。
- 魚類との聴覚器官の違い 魚が持つ側線のような、水の振動を広範囲に察知する器官をイカは持っていません。平衡石(へいこうせき)という器官で音を感知しますが、石鯛ほど敏感ではないとされています。
もちろん、真上からハンマーを振り下ろすような大きな音と気配を立てれば驚きますが、
石鯛のようにポイント全体が沈黙してしまうほどのインパクトはないと考えてよいでしょう。
結論:ターゲットの習性を理解することが重要
ただし、釣り人としての配慮は忘れずに
アオリイカに影響が少ないからといって、朝の磯で大きな音を立てて良いわけではありません。
もしあなたの隣に石鯛狙いの釣り師がいた場合、あなたの立てた音でその人の一日を台無しに
してしまう可能性があります。
釣りは自然と他の釣り人へのリスペクトの上に成り立つものです。
たとえ自分の狙いがアオリイカであっても、周囲に配慮して静かに行動するのが、
すべての釣り人にとっての共通マナーです。
状況をよく見て、お互いが気持ちよく釣りを楽しめるように心がけましょう。


