海の刀剣、タチウオの神秘的な輝きの正体とは?
サーベルのように細長く、全身がメタリックな銀色に輝くタチウオ(太刀魚)。
その光沢は、まさに「海の刀剣」の名にふさわしい美しさです。
しかし、海の中でギラギラと銀色に輝くことは、かえって捕食者(天敵)に自分の存在を
知らせてしまい、**危険性が高いのではないか?**と疑問に思う方もいるでしょう。
ご安心ください。
実はこの銀色の輝きこそが、深海でタチウオが生き抜くための究極の生存戦略なのです。
💡 銀色の正体は「グアニン」という天然のハイテク素材!
タチウオの体を覆う美しい銀色の層は、一般的な魚のウロコではありません。
その正体は、**「グアニン(guanine)」**という特殊な物質の結晶です。
1. 鱗を持たないタチウオを保護する「太刀箔」
タチウオはほとんど鱗を持たない魚で、体表は極めて薄いグアニンの層で覆われています。
この層は「タチ箔(たちはく)」とも呼ばれ、手で触ると簡単に剥がれてしまうほど繊細です。
2. かつては工業製品の原料にも
このグアニンの結晶が持つ独特の光沢は、かつて人間の生活にも利用されていました。
銀粉として採取され、模造真珠の原料や、マニキュア、アイシャドウなどの化粧品のラメとして
利用されていた歴史があります。
🛡️ 目立つはずの銀色が「消える」?驚きの鏡面カモフラージュ
では、なぜこの光沢が危険ではないのでしょうか。
それは、タチウオの銀色が、海中で**「保護色」として機能するからです。
この戦略を「鏡面迷彩(きょうめんめいさい)」**と呼びます。
3. 海中で体を「透明」にするカモフラージュ術
タチウオの鏡のような銀色の体表は、周囲から差し込む光や、海中の色を反射・拡散します。
- 上から見た場合: 上空や海面の光を反射し、海の色や光と一体化して見えにくくなります。
- 下から見た場合: 海面から差し込む光を反射し、体が発光しているように見えることで、暗い背景に溶け込み、輪郭がぼやけます。
つまり、どの角度から見ても周囲の環境の色や明るさを反射することで、自身の体の輪郭を曖昧に
し、捕食者や獲物から**「姿を消す」**効果を発揮しているのです。
4. 垂直姿勢との最強コンビネーション
前回の記事で解説した垂直の立ち泳ぎと、この銀色の体は、セットで機能しています。
垂直に立つことで、太陽光が水面を通して差し込む角度に対し、体表のグアニン層が最も効率よく
光を反射し、カモフラージュ効果を最大限に高めていると考えられています。
結論:タチウオの輝きは「美しさ」と「生存」を両立させる進化の賜物
タチウオの銀色の輝きは、ただ目立つためのものではありません。
**「グアニン」というハイテク素材と、「垂直姿勢」という特殊な泳ぎ方を組み合わせることで、
「捕食」も「防御」**も有利に進める、深海魚の究極の生存戦略だったのです。
次にタチウオを見る機会があれば、その銀色の輝きの裏に隠された、壮大な自然の知恵に思いを
馳せてみてはいかがでしょうか。


