釣り人なら誰もが一度は出会う魚、エソ。
その細長い見た目や、獰猛な顔つきから「外道(げどう)」として扱われがちですが、
特に強烈なのが、写真でも一目瞭然のその鋭い歯です。
- 無数の鋭い歯が密集:まさに小さなサメ、もしくはノコギリのような形状。
- 獲物を逃さない構造:一度捕らえた獲物を逃がさないよう、内側に向かって生えています。
- 釣り人に嫌われる理由:この鋭さで、せっかくのハリスやルアーのラインを一瞬で切断してしまうため、釣り人からは厄介者扱いされやすいのです。
しかし、このエソは見た目とは裏腹に、日本が誇るある高級食材の原料として、
非常に重要な役割を果たしているのです。
エソの歯に隠された秘密!獰猛なハンターの生態
エソの歯がなぜこれほど鋭く、多く密集しているのでしょうか。
それはエソの生態に深く関係しています。
1. 待ち伏せ型の肉食魚
エソは海底の砂地に潜み、頭だけを出して待ち伏せ型の捕食を行います。
小魚やエビ、カニなどを主なエサとする肉食魚です。
2. 獲物を一瞬で仕留め、逃さない
大きく裂けた口を開け、獲物を丸呑みにする瞬間、この無数の鋭い歯が活躍します。
針のように細く尖った歯が獲物に深く食い込み、滑らせることなくしっかりとホールドすることで、逃走を許しません。
これが、エソが獰猛なハンターと呼ばれる所以です。
3. 英名が示す恐ろしい姿
その見た目から、英語圏では「Lizardfish(トカゲ魚)」や「Snakefish(ヘビ魚)」と呼ばれています。
エソ科の魚は世界で50種以上、日本近海だけでも20種以上が確認されており、
種類によって大きさや体色に違いがありますが、この鋭い歯は共通した大きな特徴です。
エソは「外道」にあらず!実は高級練り物の王様
釣り人から煙たがられるエソですが、実はその身は非常に美味で、ある分野では最高級品として
重宝されています。
上質な「白身」と「旨み」
エソは、クセのない上質な白身を持ち、加熱しても身が締まりすぎない柔らかさ、そして強い旨味が特徴です。
特に産卵期前の秋から春にかけては脂乗りもよく、刺身でも絶品と言われます。
エソ最大の弱点:「小骨の多さ」
エソが一般市場にあまり出回らない最大の理由は、身に非常に小骨が多いことです。
この小骨の処理が難しいため、家庭で調理するには手間がかかると敬遠されがちでした。
欠点を克服!かまぼこ・練り物の最高級原料
この小骨の多さという難点を「克服」し、エソを最高級の食材へと変貌させたのが、
すり身としての活用です。
エソのすり身は、以下の点で他の魚を圧倒しています。
- 弾力(足)の強さ:適度な粘りと強い弾力があり、締まりの良い練り物になります。
- 美しい白さ:加熱後も美しい白色を保ちます。
- 豊かな旨味:練り物に加工しても、エソ本来の強い旨味が失われません。
そのため、エソ、特に「マエソ」は、**高級かまぼこや薩摩揚げ(つけ揚げ)**の原料として、
非常に高く評価されており、「練り物の王様」とも呼ばれています。
私たちが日常口にする美味しいかまぼこの裏には、エソの存在があるのです。
釣れたエソを美味しく食べる!簡単な調理法
もしあなたがエソを釣り上げたら、ぜひ試していただきたいのがこの調理法です。
【注意】捌く際は必ず「鋭い歯」に注意!
エソを捌く際は、鋭利な歯で手を滑らせて怪我をしないよう、軍手や厚手のゴム手袋を着用し、
慎重に行いましょう。
まとめ
エソは、その衝撃的な「ノコギリのような歯」ゆえに釣り人からは外道扱いされがちですが、
その身は高級練り物の王様として日本の食卓を支える重要な魚です。
釣れてもガッカリせず、歯に気を付けて持ち帰り、自家製練り物や干物でその極上の白身の味を
堪能してみてください。


