「回遊魚」と聞くと、マグロやカツオのように大海原を泳ぎ続ける魚をイメージしがちです。
しかし、実は回遊魚の定義はもっと幅広く、その生態や移動距離は魚種によって多岐にわたります。
この記事では、回遊魚の奥深い世界を、移動様式ごとに詳しく解説します。
1. 遠距離回遊魚:地球規模の旅をする旅人たち
最もイメージしやすいのがこのタイプです。産卵や餌を求めて、数千キロメートルにも及ぶ壮大な旅をします。
- マグロ・カツオ: 黒潮や親潮に乗って広範囲を回遊します。この回遊は、餌となるプランクトンや小魚を追う「索餌回遊」と、産卵のために特定の場所へ向かう「産卵回遊」に分けられます。
- カジキ・メカジキ: マグロと同様に、広大な海を回遊します。特にメカジキは、水深1000mを超える深海から海面近くまでを行き来する、立体的な回遊も行います。
- サケ・マス: 川で生まれ、海へ降りて成長し、産卵のために再び生まれた川に戻ってくる「遡河回遊」を行うのが特徴です。その帰巣本能は驚くほど正確で、何千キロも離れた場所からでも自分の生まれた川を探し当てます。
2. 近距離回遊魚:沿岸域を拠点に移動する住人たち
遠距離回遊魚ほど大規模な移動はしませんが、季節や環境の変化に応じて、ある程度の範囲を移動します。
- ブリ: 「出世魚」として知られるブリは、成長とともに名前が変わります。成長段階によって沿岸域を回遊し、冬には暖かい水域を求めて南下、春には北上するという「季節回遊」を行います。
- イワシ・アジ: 巨大な群れを形成し、日本近海を季節ごとに移動します。餌となるプランクトンや、より適した水温の場所を求めて移動します。
3. 半回遊魚・部分回遊魚:定住と旅を使い分ける個性派
すべての個体が回遊するわけではなく、一部の個体だけが回遊する、あるいは生活史の一部で回遊する魚もいます。
- ヤマメ・アマゴ: サケ科の魚ですが、すべてが海に降りるわけではありません。海に降りて大きく成長する個体を「サクラマス」や「サツキマス」と呼び、川に残って一生を過ごす個体を「ヤマメ」や「アマゴ」と呼びます。これは、同じ親から生まれても、環境や遺伝によって回遊するか否かが決まる、非常に興味深い生態です。
- ウグイ・アユ: 普段は川にいますが、産卵のために海へ降りる、あるいは海と川を行き来する種類もいます。特にアユは、川と海を行き来する「両側回遊」を行う魚として知られています。
- 死滅回遊魚: 本来の生息域ではない場所で生まれ、成長しますが、冬などの寒さで死んでしまう魚を指します。熱帯の魚の卵や稚魚が、暖流に乗って日本近海まで運ばれてくることが原因で、キイロハギやチョウチョウウオなどがその代表です。


