アオリイカの新子(しんこ=生まれてから数か月ほどの小型個体)が柔らかくておいしい理由は、成長段階にともなう筋肉の構造・化学成分・生活環境の違いにあります。
釣り人目線で分かりやすく整理すると、以下のようなポイントが挙げられます。
1. 筋繊維が細く結合が弱い
・新子はまだ急成長の途中で、筋肉を構成する繊維(筋原線維)が細く、コラーゲン量も少ない状態です。
・筋肉の結合組織が未発達なため、包丁を入れるとスッと切れ、歯に抵抗が少ない柔らかい食感になります。
・成長した親イカは筋繊維が太く締まり、コラーゲンも増えるため、歯ごたえが強くなります。
2. 水分量が多く“とろり”とした舌触り
・新子は体内に含む水分が多く、タンパク質がまだ硬化していないため、刺身にするとしっとりとした口当たりに。
・この水分は冷凍や長時間の保存に弱いので、釣りたてを海水氷で冷やして食べると特に甘みが際立ちます。
3. グリコーゲンが豊富で甘みが強い
・イカの旨味や甘味の元となるグリコーゲン(糖質)が、成長期の新子は相対的に多く蓄えられています。
・釣った直後はATP(鮮度を示すエネルギー物質)も高く、時間が経つにつれて分解してアミノ酸が増えるため、軽く寝かせても甘みがさらに増します。
4. 活発な回遊による「身の柔らかさ」
・新子は沿岸で群れを成して活発に泳ぎ、成魚よりも運動量が多い一方で、まだ筋肉に強い負荷をかけるような捕食行動が少ないため、筋肉が硬く締まりにくい傾向があります。
・このため、火を通しても“もっちり”した柔らかさが残ります。
5. 旬のタイミング
・秋に釣れる新子は、夏に孵化して2〜4か月ほどの個体が中心。
・水温が下がり始める頃で身の代謝が緩やかになり、旨味成分が保たれやすい季節です。
釣り人向けワンポイント
・新子は小型のため、持ち帰り過ぎに注意。地域によっては資源保護のためリリース推奨サイズ(胴長10〜12cm以下など)を設けている場所もあります。
・冷却は海水氷がベスト。真水氷だと浸透圧の差で表皮が傷み、食感や見た目が劣化します。
まとめ
アオリイカの新子は
・筋肉が未発達で繊維が細い
・水分が多く甘み成分も豊富
という生理的特徴により、柔らかく甘い食味を楽しめます。
釣りたてを海水氷で締め、鮮度の高いまま食べることで、その“とろけるような旨さ”を最大限に引き出せます。


