「日本人は魚をよく食べる」と言われるけれど──
ではその“魚食のベース”にあるのは、何の魚だろう?
タイ?マグロ?ブリ?
たしかに、どれも美味しく、祝い事にも使われる魚たちです。
しかし、日々の食卓に最も近く、出汁にも、つみれにも、丸干しにもなってきた魚──
それこそが「イワシ」。
この記事では、日本人の魚食文化において、**イワシが果たしてきた“基礎的役割”**を解き明かしていきます。
【1】出汁文化の根幹=イワシの煮干し(いりこ)
日本料理に欠かせない「出汁(だし)」の世界。
その中でも、**もっとも家庭に浸透している出汁のひとつが「いりこ出汁」**です。
-
原料は主にカタクチイワシやマイワシ
-
煮出すと、クセが少なく甘みのある味わい
-
味噌汁、煮物、うどんつゆ、炊き込みご飯に最適
この「煮干し出汁」は関西・九州など西日本で特によく使われており、
“日本の味のベース”にイワシが存在している証拠といえるでしょう。
【2】食卓の「常連魚」=安定供給と調理の多様性
イワシは回遊魚でありながら、沿岸近くで大量に漁獲できるため、
昔から日本全国で「日常魚」として親しまれてきました。
調理法はバリエーション豊富:
-
丸干し・開き干し(保存食)
-
つみれ汁(骨ごと栄養豊富)
-
梅煮・味噌煮(ご飯が進むおかず)
-
フライ・天ぷら(子どもにも人気)
-
酢漬け・刺身(鮮度抜群の時限定)
毎日食べても飽きない“万能魚”として、家庭料理のベースを担ってきた存在なのです。
【3】カルシウムとDHA・EPAの供給源としても優秀
日本人の食生活における「健康面」でも、イワシは重要なポジションにあります。
| 栄養成分 | 含有量(100g中) | 特徴 |
|---|---|---|
| カルシウム | 約220~290mg(丸干し) | 骨ごと食べられるため吸収率が高い |
| DHA | 約1,200mg | 脳や神経の発達に寄与 |
| EPA | 約800mg | 血流改善・中性脂肪低下に効果 |
とくに丸干しやつみれ汁は“骨まで食べられる完全栄養”。
現代の栄養学的にも、「魚の基本はイワシ」と言われる理由がここにあります。
【4】子どもから高齢者まで──誰もが口にした経験がある魚
学校給食では「丸干しイワシ」や「イワシの甘露煮」が登場し、
おばあちゃんの味といえば「つみれ汁」や「煮付け」だった人も多いのではないでしょうか?
-
噛めば噛むほど味が出る
-
小骨も柔らかく、子どもでも食べやすい
-
何より「日本人にとって懐かしい味」
**イワシは、世代を超えて親しまれてきた“国民魚”**でもあるのです。
【5】イワシがあったからこそ「魚を日常食にできた」
マグロ、カツオ、ブリ、タイ──
これらの魚は高級で季節性も強く、頻繁には食卓に上がりません。
イワシが優れていたのは、
-
安くて栄養豊富
-
漁獲量が安定していた
-
調理の応用範囲が広かった
-
加工(干物・煮干し・塩辛)しやすかった
つまり、魚を「特別な食べ物」から「日常のタンパク源」に押し上げた立役者だったのです。
【まとめ】日本人の魚食、そのベースには「イワシ」がいた
| 視点 | イワシの役割 |
|---|---|
| 味覚文化 | 出汁・味噌汁・煮物などの土台 |
| 栄養学 | DHA・EPA・カルシウムなど栄養価が高い |
| 生活基盤 | 干物・保存食・給食・庶民の食卓に密着 |
| 継承文化 | 子どもから高齢者までなじみがある「国民魚」 |
結びに:日常にこそ真の価値がある
高級魚の華やかさもいい。
珍魚の話題性も面白い。
でも、「毎日食べられて、体に良くて、味も飽きない」──
そんな魚が“魚文化のベース”でなくて、何がそうだと言えるでしょうか?
その魚の名は──イワシ。
今日の味噌汁、明日のつみれ、出汁の奥深い香り。
日本の魚食文化は、いつもイワシとともにあったのです。


