■ 魚に慣れていない人が感じる「生臭さ」
「魚ってちょっと臭い…」
「刺身は苦手、あの生臭さがダメ」
このように、魚を日常的に食べない人の多くが口にする「魚は臭い」という印象。
けれど、実際に釣り人や魚好きの人からは、「新鮮な魚は全然臭わない」「刺身は匂いより甘み」といった声もよく聞かれます。
この違いはいったい何なのでしょうか?
魚の臭いの正体と、その発生メカニズムについて、科学的に解説します。
■ 魚が臭いと感じる理由とは?
結論から言うと、魚の「生臭さ」は主に魚体内の成分が時間とともに分解されることで発生します。
つまり、鮮度が落ちることで“臭い”が強くなるのです。
■ 生臭さの正体①:トリメチルアミン(TMA)
魚の代表的な臭い成分が「トリメチルアミン(TMA)」です。
もともと魚の筋肉には、「トリメチルアミンオキシド(TMAO)」という無臭の成分が含まれています。
これは、深海など高圧環境でも筋肉の働きを保つための成分で、多くの海水魚が持っています。
ところがこのTMAOは、魚が死んだ後に細菌や酵素によって分解され、TMA(強烈な生臭いガス)に変化します。
このTMAこそが、「魚臭い!」と感じる主な原因物質です。
■ 生臭さの正体②:アミン類・アンモニア
魚の筋肉や内臓が腐敗し始めると、タンパク質が分解されてアミン類やアンモニアが発生します。
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ヒスタミン(アレルギー成分にもなる)
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アミン類(腐敗臭を感じさせる)
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アンモニア(鼻にツンとくる刺激臭)
これらは、時間が経過した魚や、内臓処理が遅れた場合に発生しやすいため、鮮度の低下を強く感じるポイントとなります。
■ 生臭さの正体③:魚の体表や内臓の雑菌
魚の体表やエラ、内臓には、海中の細菌や寄生虫、粘液が付着しています。
これが時間とともに腐敗すると、腐敗臭(硫黄系ガスや脂肪酸)を発する原因に。
特に内臓処理が遅れた場合、これらの雑菌が急速に増殖し、強い臭いを発生させます。
■ 実は「海水魚」と「淡水魚」では臭いが違う?
海水魚は、TMAOを多く含むため、腐敗するとより「魚臭さ」が強くなります。
一方、淡水魚(川魚)はこの成分が少ない代わりに、泥臭さ(ジオスミンなど)や藻臭さが気になることも。
つまり、「生臭い」と一言で言っても、魚の種類によって発生源も香りの質も異なるのです。
■ 魚の臭いを抑える3つの鉄則
① とにかく「鮮度」が命!
釣ってすぐ冷却(理想は海水氷)し、内臓処理を速やかに行うことで、TMAの発生を防ぎます。
とくに釣った魚を真水氷ではなく海水氷で冷やすと、臭みを抑えやすくなります。
② 血抜きと内臓処理を素早く
魚の血や内臓は、腐敗しやすく臭いの発生源。
釣った直後に血抜きをし、できるだけ早く内臓を取り除くことで雑菌の繁殖と悪臭を防ぐことができます。
③ 皮を引く・焼く・酢締めで臭い成分を除去
調理の際には以下のような方法で臭みを取るのが効果的です。
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皮付きの魚は皮を引く(臭い成分が皮下に集中)
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焼き物にする(アミン類を熱で飛ばす)
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酢や塩でしめる(pHの変化で分解臭を抑制)
■ 魚嫌いの人にも伝えたい:新鮮な魚は「無臭」に近い
実は、本当に新鮮な魚は「臭くない」どころか、「潮の香り」や「甘い香り」がするもの。
臭いの正体は、鮮度低下によって出る成分の変化によるものであり、「魚=臭い」は誤解です。
釣り人の間では、釣ってすぐ海水氷で冷却し、締めた魚はまるでフルーツのように香るとも言われています。
■ まとめ:魚の匂いは“鮮度と処理”で変わる!
魚が臭いと言われるのは、「トリメチルアミン」や「腐敗性アミン類」が原因です。
しかしそれは、鮮度が落ちた後の話。
逆に言えば、正しい処理をすれば臭くないどころか旨味が増すのです。
釣りたての魚や丁寧に処理された魚は、「臭い」ではなく「旨い」と感じられるはず。
これからは、魚の匂いの原因を知って、正しく処理することで魚嫌いを克服できるかもしれません。


