アンコウがかつて「下魚(げざかな)」と見なされていた一方で、現在では超高級魚とされるよう
になった背景には、食文化や漁業技術、調理法の発展が深く関係しています。
以下にその理由を詳しく解説します。
1. 保存技術の向上
- 昔の状況:
アンコウの肉は柔らかく腐敗しやすいため、新鮮な状態で流通させるのが難しく、「臭みが強い」魚として嫌われていました。 - 現在の状況:
冷蔵・冷凍技術や流通網の進化により、新鮮なアンコウが市場に出回るようになり、その美味しさが見直されました。特に鮮度の高い肝(アンキモ)は「海のフォアグラ」と呼ばれるほど高級食材となりました。
2. 調理技術の進化
- 昔の状況:
アンコウは独特の形状や骨の多さから調理が難しく、一般家庭では扱いにくい魚でした。また、適切に下処理されないと臭みが残るため敬遠されていました。 - 現在の状況:
プロの調理技術が進歩し、「吊るし切り」などの専門的な調理法が普及しました。これにより、アンコウの美味しい部位(肝、皮、ヒレなど)を無駄なく活用できるようになり、評価が高まりました。
3. 全部食べられる「捨てるところがない魚」
- 昔の状況:
アンコウの独特な外見と、大部分が水分を含むため可食部が少ないと考えられていました。 - 現在の状況:
「七つ道具」(肝、皮、ヒレ、胃、卵巣、エラ、身)がすべて食べられることが注目され、特に鍋料理などでその特性が生かされています。この「捨てるところがない」という特徴が高級感を生む要因になりました。
4. 鍋料理文化との相性
- 昔の状況:
アンコウの料理法が限られており、そのポテンシャルが十分に活かされていませんでした。 - 現在の状況:
アンコウ鍋が冬の高級料理として定着。ゼラチン質の身と肝の濃厚な旨味が、だしに溶け出して絶品の味わいを生みます。寒い時期に需要が高まり、冬の高級食材としての地位を確立しました。
5. 健康志向の高まり
- 昔の状況:
脂肪が多い魚や肉が好まれ、アンコウの淡白な身は物足りないとされていました。 - 現在の状況:
アンコウの身は低脂肪・高タンパクでヘルシーな食材として注目されています。また、肝は栄養価が高く、ビタミンAやDが豊富なことが評価されています。
6. 天然資源の希少性
- 昔の状況:
大量に漁獲されることもあり、安価で流通していました。 - 現在の状況:
天然アンコウの漁獲量が減少し、希少性が高まったことで価格が上昇しました。また、産地ブランド(茨城県の「常磐沖のアンコウ」など)が確立し、付加価値が高まりました。
7. 外見の再評価
- 昔の状況:
アンコウは「グロテスクで不気味」とされ、見た目で敬遠されがちでした。 - 現在の状況:
見た目は独特ですが、味の良さや食材としての価値が広く知られるようになり、外見はユニークな特徴として受け入れられるようになりました。
8. 高級店での採用と評価の変化
- 昔の状況:
庶民的な魚とされ、高級料理店での扱いは少なかった。 - 現在の状況:
高級料亭や割烹でアンコウ料理が提供されるようになり、その上品な味わいが評価されるようになりました。また、「アンキモ」が高級食材として海外でも注目されています。
まとめ
アンコウが高級魚になった理由は、以下の要因が複合的に作用した結果です:
- 保存技術と調理技術の進化で美味しさが再評価された。
- 「捨てるところがない魚」という特性が注目された。
- 鍋文化や健康志向の流行にマッチした。
- 天然資源の希少性や産地ブランド化で価値が上がった。
これらの変化により、アンコウは「グロテスクな下魚」から「冬の味覚を代表する超高級魚」へと
進化を遂げました。


