穏やかな日の堤防。
ふと海面を見ると、大量のボラが群れて、水面で口をパクパクさせている。
「酸欠なのかな?」
「水が汚くて苦しいのかな?」
そんな風に心配になったこと、ありませんか。
まるで助けを求めているようにも見えますし、ちょっと不気味に感じる人もいるかもしれません。
でも、安心してください。
彼らは決して弱っているわけではありません。
むしろ、元気いっぱいです。
では、一体何をしているのか?
答えはシンプル。
**「ご飯を食べている」**のです。
ボラという魚は、海底の泥の中にいる有機物を泥ごと食べたり、岩についた苔を削ぎ取って食べたりする、いわば「海の掃除屋さん」です。
そして、あの水面パクパク行動。
あれは、水面の表面張力に集まった「プランクトン」や「油膜(有機物)」を吸い込んでいるのです。
水面には、目に見えない微細な栄養分が膜のように浮いています。
ボラは上唇の構造が特殊で、この水面の栄養分を効率よく「掃除機」のように吸い込むことができます。
あのパクパク音をよく聞いてみてください。
「ジュボッ、ジュボッ」と、何かをすすっているような音がしませんか。
あれは呼吸困難の喘ぎ声ではなく、美味しいスープを飲んでいる時の音なんです。
もちろん、夏場の高水温時や、赤潮などで極端に酸素濃度が低い時にも、鼻上げ(呼吸)のために水面に顔を出すことはあります。
しかし、普段見かけるリズミカルなパクパクは、ほとんどが食事タイムです。
人間で言えば、お皿に残ったスープをズズズッとすすっているようなもの。
そう思うと、あの必死な顔もなんだか愛嬌たっぷりに見えてきませんか。
「あぁ、今日も掃除してくれてるんだな」。
次からは、そんな温かい目で見守ってあげてください。
ちなみに、この状態のボラは食事に夢中なので、ルアーやエサにはなかなか反応しません。
釣れない時は、そっとしておいてあげるのが一番です。
ボラの生態を知れば、海を見る目がまた一つ変わりますよ。

