釣り人の天敵「鵜(ウ)」、なぜ魚は逃げられない?驚愕の遊泳速度と、釣り場が沈黙する理由

楽しい釣りの最中、視界の端に「黒い影」が入ってくる。

水面に突き刺さるように潜り、しばらく出てこない。

そして、プハッと顔を出した時には、口にくわえた魚を飲み込んでいる。

そう、「鵜(ウ)」です。

私たち釣り人にとって、これほど厄介な存在はありません。

「あいつが来たら、もう終わりだ」

そう諦めて竿をたたむ人も多いでしょう。

なぜ、魚たちはあんなに簡単に捕まってしまうのか。

鵜は一体どれくらいのスピードで泳いでいるのか。

そして、なぜ一羽来ただけで、海全体が死んだように静まり返ってしまうのか。

今回は、この憎き(?)ハンターの能力と、現場での残酷な真実についてお話しします。


1. 魚より速い?鵜の「遊泳速度」の秘密

まず、誰もが気になる「速さ」について。

水中での鵜の最高速度は、時速約30kmから40kmにも達すると言われています。

「なんだ、車より遅いじゃないか」と思うかもしれません。

しかし、水の抵抗は空気の約800倍です。

その中でこのスピードを出すのは、陸上で言えばチーター並みの瞬発力です。

一方、私たちが狙うアジやイワシ。

彼らも逃げる時は速いですが、持久力がありません。

鵜は、強力な水かきがついた足と、時には翼まで使って「水中を飛ぶ」ように追いかけてきます。

直線的なスピードもさることながら、急旋回や急浮上など、3次元的な動きで魚を追い詰めるのです。

逃げ惑う魚にとって、後ろからこの「黒い魚雷」が迫ってくる恐怖は計り知れません。

2. なぜ魚は気づかない?「死角」からの奇襲

スピードだけではありません。

鵜の狩りが成功する最大の理由は、「奇襲」にあります。

魚は、上(水面方向)からの攻撃に意外と弱い生き物です。

海鳥の多くは空から飛び込みますが、鵜は一度着水してから潜ります。

そして、ある程度深く潜ってから、今度は「下から上へ」、あるいは「横から」魚の群れに突っ込みます。

魚の群れが、太陽の光でキラキラしているのを、暗い深場からシルエットで見つけ出し、一気に距離を詰める。

魚が「ヤバい!」と気づいた時には、もう鋭いクチバシが届く距離にいるのです。

3. 一羽来たら「終了」の合図?

「鵜が1匹魚を食べただけなら、まだ残りの魚がいるだろう」

そう思って釣りを続けても、全くアタリがなくなる。

これは、魚が「食べ尽くされた」からではありません。

「恐怖で散ってしまった」か「岩陰にへばりついて動けなくなった」からです。

自然界の掟として、捕食者が近くにいる時、魚は絶対にエサを食いません。

命が最優先だからです。

鵜がダイブを繰り返すことで、そのエリアの魚の警戒レベルはMAXになります。

群れは散り散りになり、コマセ(撒き餌)をいくら撒いても、ビビって出てこない。

これが「鵜が来ると釣れない」の正体です。

特に、アジやイワシなどの回遊魚は、群れを維持できなくなるとパニックになり、その場から去ってしまいます。

4. 鵜が来たらどうする?現場の対策

残念ながら、特効薬はありません。

石を投げるわけにもいきませんし、大声を出しても彼らは慣れっこです。

私たちが現場で推奨している対策は、以下の2つだけです。

  1. 「少し休む」 鵜が去ってもしばらくは魚の警戒心が解けません。 30分ほど竿を置いて、コーヒーでも飲んで場を休ませる。 静寂が戻れば、また魚が集まりだすこともあります。

  2. 「潔く移動する」 これが一番確実です。 鵜が執着している場所は、魚がいる証拠ではありますが、釣れる状況ではありません。 「あっちに行け」と念じるより、人間が移動した方が早いです。


自然の一部として受け入れるしかない

悔しいですが、鵜も生きるために必死です。

彼らがいるということは、そこには豊かなベイト(エサ)がいるという証明でもあります。

「今日は鵜に負けたな」

そう苦笑いできる余裕を持つのも、釣り人の器量かもしれません。

(まあ、本音を言えば、私のウキの周りには来ないでほしいですけどね…)

自然の厳しさを教えてくれる黒いハンター。

上手く付き合いながら、彼らの裏をかいて一匹を釣り上げる。

それもまた、釣りの奥深さではないでしょうか。

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