釣り歴が長くなるほど、あるいは魚を食べ慣れるほど、
「あっさり魚(白身魚や低脂肪の魚)」を欲する傾向が高いです。
「脂がないと、パサパサして物足りないんじゃない?」
もしそう思っているなら、それは非常にもったいない誤解です。
今回は、通が最後に辿り着くと言われる、あっさり魚の底知れぬ魅力について深掘りします。
脂という「化粧」を落とした、すっぴんの美しさ
あっさり魚の最大の魅力。
それは、**「身そのものが持つ、繊細な甘みと旨味をダイレクトに味わえる」**という点に尽きます。
脂は旨いですが、時に強すぎて、魚本来の味を覆い隠してしまう「厚化粧」のような側面もあります。
対して、あっさりした魚は「すっぴん」です。
ごまかしが利きません。
口に入れた瞬間は淡泊に感じるかもしれません。
しかし、噛みしめるごとに、繊維の奥からじわじわと上品な甘みが染み出してきます。
「あぁ、この魚はこういう味だったのか」と、舌の細胞が喜ぶような感覚。
これこそが、あっさり魚の真骨頂です。
鮮度が命の「食感」という武器
脂に頼らない魚は、食感(テクスチャー)で勝負できます。
釣りたての真鯛やイサキ、カワハギなどの白身魚を想像してください。
コリコリ、プリプリとした弾力。
これは、脂で身が柔らかくなっている魚には出せない特権です。
噛むこと自体が楽しく、噛む回数が増えることで、脳が「旨い」と認識する。
アジやサバなどの青物でも、夏場の脂が抜けた個体は、身が引き締まっていて刺身で食べると驚くほど爽やかです。
「キレのある旨さ」とでも言いましょうか。
いくら食べても飽きず、胃もたれもしない。
日本酒をちびちびやりながら味わうには、最高の相棒となります。
料理人の腕が鳴る、無限の可能性
あっさりしているということは、どんな味付けにも染まるということです。
脂の強い魚は、どうしても「脂の味」が勝ってしまいますが、あっさり魚はキャンバスのようなもの。
昆布締めにすれば、昆布のグルタミン酸を吸って、ねっとりと濃厚な珍味に化けます。
油を使った料理(天ぷら、フライ、ムニエル)との相性も抜群です。
足りない油分を調理で補うことで、「外はサクッ、中はフワッ」という極上のコントラストが生まれます。
煮付けにしても、煮汁の味をよく吸い込み、ご飯が進むおかずになります。
釣り人としては、釣った魚の個体差を見て、「こいつはあっさりだから、今日はカルパッチョでオリーブオイルを足そう」といったアレンジができるのも楽しいですよね。
釣太郎からの提案:自分の舌で「旬」を感じよう
「脂がのっている=正解」という固定観念を一度捨ててみてください。
南紀の海には、脂は控えめでも、驚くほど旨味が濃い魚がたくさん泳いでいます。
特に産卵後の個体や、冬場の低水温期の白身魚などは、あっさりの中に深い味わいを秘めています。
それを引き出し、味わい尽くすのが釣り人の特権であり、粋な楽しみ方です。

