スーパーで買った魚、見た目は普通なのに、食べてみたら「生臭い」「身がボソボソしている」
「旨味がない」…そんな経験はありませんか?
実はそれ、魚の種類や鮮度の問題だけではありません。最大の原因は、その魚の**「死に方」**にあるのです。
多くの流通魚は、網の中で暴れ回り、酸欠で苦しみながら死んでいく、いわゆる**「野締め(のじめ)」**の状態です。
残念ながら、この死に方は魚の美味しさを台無しにしてしまう最悪のパターンと言えます。
なぜ、網の中で苦悶死すると魚はマズくなるのでしょうか?
この記事では、釣り人なら絶対に知っておきたい、**「野締めで味が落ちる決定的な3つの理由」**を科学的な視点から分かりやすく解説します。
これを知れば、釣り場での「活き締め」の重要性が骨身にしみて分かるはずです。
理由1:旨味のエネルギー源「ATP」が枯渇してしまう
「野締め」の魚が美味しくない最大の理由は、旨味の元がすっからかんの状態だからです。
魚の筋肉中には、生きるためのエネルギー源である**「ATP(アデノシン三リン酸)」という物質が蓄えられています。
このATPは、魚が死んだ後、時間経過とともに分解され、最強の旨味成分である「イノシン酸」**に変化します。
つまり、**「死んだ直後の体内にATPがたくさん残っているほど、後で旨味たっぷりの魚になる」**のです。
しかし、網にかかった魚はどうでしょうか? 狭い網の中で逃げようと必死に暴れ回ります。
この激しい運動によって、筋肉中のATPは急速に消費されてしまいます。
そして、エネルギーを使い果たし、疲れ切って死んで(苦悶死して)しまいます。
この状態では、旨味に変わるはずの元(ATP)がほとんど残っていません。
結果として、いくら新鮮でも「味気ない、旨味の薄い魚」になってしまうのです。
理由2:全身に血が回り、強烈な「生臭さ」の原因になる
2つ目の理由は、魚の味を最も損なう**「血液」**の問題です。
網の中で酸欠状態に陥ると、魚は酸素を求めてエラを激しく動かし、心臓の鼓動が早くなります。
すると、全身の細かい毛細血管の隅々まで血液が送り込まれてしまいます。
これを釣り用語で**「血が回る」**と表現します。
血が回った状態で死ぬと、血液は筋肉の中に留まったまま凝固し、後から抜くことが非常に困難になります。
魚の血液は腐敗が非常に早く、雑菌の温床にもなります。これが、あの嫌な生臭さの最大の原因となるのです。
適切に血抜きされた魚の身は透明感がありますが、野締めの魚の身が赤黒く濁って見えるのは、
この残留した血液のせいなのです。
理由3:暴れて体温が上昇し、「身焼け」を起こす
3つ目は、物理的な熱による劣化です。
人間と同じように、魚も激しい運動をすると体温が上昇します。
特に水温が高い夏場などに網の中で暴れ回ると、魚自身の体温が急激に上がり、
その熱で自分自身の身が煮えたような状態になってしまいます。
これを**「身焼け(やけ)」**や「焼け肉」と呼びます。
身焼けを起こした魚は、身が白っぽくボケてしまい、締まりのないブヨブヨ・ボソボソとした食感になります。
一度焼けてしまった身は、どんなに冷やしても元には戻りません。
野締めの魚は、自らの熱で品質を著しく劣化させてしまっているケースが多いのです。
まとめ:美味しい魚への近道は「即死」させること
網の中で暴れて苦悶死した「野締め」の魚がマズい理由をまとめます。
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暴れてエネルギーを使い果たし、旨味の元(ATP)が枯渇する。
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酸欠で苦しみ、全身に臭みの原因である血が回る。
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体温上昇により、身焼けを起こして食感が悪くなる。
これらはすべて、魚が死ぬ直前の「苦しみ」が原因です。
逆に言えば、これらの要素をすべて排除したのが、我々釣り人が行う**「活き締め(脳天締め・神経締め)」と「血抜き」**です。
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釣り上げて即座に脳を破壊して即死させることで、ATPを温存する。
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心臓が動いているうちにエラを切って血を排出させ、臭みを断つ。
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暴れさせないことで体温上昇を防ぐ。
同じ魚種であっても、「野締め」と「活き締め」では、味は天と地ほども差が出ます。
「魚本来のポテンシャル」を最大限に引き出して美味しく食べる。
これこそが、釣り人に許された最大の特権なのです。


