ヤエン師を最も悩ませる「かじるだけ」の犯行
ヤエン釣りをしていて、最も歯がゆい瞬間。 それは、「ジーッ…」とドラグが鳴り、アオリイカのアタリを確信したにもかかわらず、すぐにラインが出るのが止まってしまう時ではないでしょうか。
期待と緊張が入り混じり、ヤエン投入のタイミングを計っていると、ふっと竿先が軽くなる。 仕掛けを回収してみると、そこには頭だけ、あるいは背中だけを無残にかじられた活アジの姿が…。
「またか!」 「頼むから最後まで食べてくれ!」
釣り場からそんな悲痛な叫びが聞こえてきそうです。 なぜアオリイカは、一度は抱きついたアジをすぐに放してしまうのでしょうか。 海の中で起きている「かじるだけ」の犯行。その原因と、私たちができる対策を探ります。
【原因分析】なぜアオリイカはアジをすぐに放すのか?
アオリイカがアジを放すのには、必ず理由があります。 考えられる主な原因を5つに分けて分析しました。
原因1:アオリイカの活性が低い(本気食いではない)
人間にも「すごくお腹が空いている時」と「ちょっと口寂しい時」があるように、イカにも活性の差があります。
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水温の急変: 特に水温が急激に下がった日は、活性が一気に落ちます。
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潮が動かない: 潮が止まっている「ど干潮」や「ど満潮」のタイミングは、イカの食い気も止まりがちです。
こうした低活性時は、「目の前を通りかかったから、とりあえず触ってみた(かじってみた)」だけで、本気で捕食しようという意思が弱いことがあります。
原因2:アオリイカのサイズが小さい(秋イカに多い)
特にシーズン初期の秋イカ(新子)に多い現象です。
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アジを仕留めきれない: 自分の体に対してアジが大きすぎると、うまく抱きつけません。
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アジが暴れて逃げられる: 抱く力が弱いため、アジが最後の力で暴れると驚いて放してしまいます。
小さいイカにとっては、アジをしっかり仕留めるのは命がけ。 少し危険を感じたり、食べにくいと感じたりすると、すぐに諦めてしまうのです。
原因3:アジに「違和感」を感じさせている(最重要)
アオリイカは非常に賢く、警戒心の強い生き物です。 アジを抱いた瞬間に、少しでも「何かおかしい」という違和感を感じると、一瞬でアジを放します。
この「違和感」の正体こそ、釣り人側のラインテンションです。
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ドラグが硬すぎる。
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道糸(ライン)を張りすぎている。
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竿先でアジの泳ぎを不自然にコントロールしようとしている。
イカがアジを抱いた瞬間、ラインが「ピン!」と張ってアジが不自然な動きをすると、イカは「罠だ!」と警戒し、アジを捨てて逃げてしまいます。
原因4:周りにライバル(他のイカ)がいない
意外かもしれませんが、これも大きな要因です。 イカは群れでいると、獲物を奪い合おうとします。
他のイカに獲られまいと、アジを抱いたら「しっかり掴んで安全な場所(沖)へ持って行こう」とします。 これが、ヤエン釣りでいう「本アタリ(沖へのラン)」につながります。
しかし、イカが単独でいる場合はライバルがいません。 その場でゆっくり食べようとするため、少しの物音や違和感でもすぐにアジを放して逃げてしまうのです。
原因5:アジ以外のベイト(エサ)が豊富すぎる
海の中に、アジよりも捕食しやすいイワシやキビナゴなどの小魚(ベイト)が大量にいる場合。 アオリイカは「お腹はいっぱい」の贅沢な状態になっています。
あえて危険を冒してまで、ラインが付いているかもしれない(=違和感のある)活アジを深追いしない、というケースです。
【対策】「かじるだけ」で終わらせないためにできること
では、この悔しい「かじるだけ」を減らし、ヤエン投入(本アタリ)につなげるためには、どうすれば良いのでしょうか。
対策1:ラインテンションの管理を徹底する(違和感を消す)
これが最も重要かつ、ヤエン釣りの技術の差が出るところです。
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ドラグ設定を「超」ゆるゆるに: アジが泳いでもラインは出ないが、アオリイカが触れたら「ジ…」と鳴るくらいの絶妙な設定を探します。
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ラインを張りすぎない: アジに自由に泳がせる「遊び」を作ります。糸フケを出しすぎてもアタリが分かりませんが、張りすぎは厳禁です。
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アジを元気に泳がせる: 弱ったアジはアピールが弱く、イカも「死にエサ」として軽くかじって終わることがあります。元気なアジを使いましょう。
対策2:アタリがあっても「超」我慢する
アタリがあっても、すぐにラインを張って様子を聞いてはいけません。 それはイカに「今、つかんでるよ!」と知らせるようなもの。
「かじるだけ」の小さなアタリは、イカがアジの頭を狙っている最中かもしれません。 イカがアジをしっかり抱き込み、**「沖に向かって走り出す」**まで、ラインを送り込むくらいの気持ちで、じっと我慢します。 この「待ち」こそがヤエン釣りの醍醐味です。
対策3:アジのサイズや付け方を変える
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イカのサイズにアジを合わせる: 秋で「かじるだけ」が多発するなら、アジを小ぶりなものに変えるだけで、しっかり抱き込むようになることがあります。
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鼻掛け・尾掛けを変えてみる: アジの泳ぎ方が変わるため、イカへのアピールも変わります。
対策4:活性の高いイカを探す(場所替え)
何度やっても「かじるだけ」が続く場所は、そのポイント全体のイカの活性が低いのかもしれません。 同じ場所に固執せず、潮通しの良い場所や、ベイトが溜まっていそうな場所へ移動する決断も重要です。
まとめ:イカとの繊細な駆け引きを楽しもう
アオリイカにアジを「かじるだけ」で放されるのは、ヤエン釣り師の宿命とも言える悩みです。
しかし、その原因の多くは「イカに違和感を与えている」ことにあります。
いかにアオリイカを騙し、警戒させず、アジを本気で抱き込ませるか。
ライン一本を通じてイカの気持ちを読み解く、この繊細な駆け引きこそが、ヤエン釣りの最大の面白さです。
「かじられた!」と悔しがるのではなく、「なぜ放した?」と考えることが、次の1杯につながるはずです。
#アジをかじるだけ#アジを放す#アジ殺し

