苦労して釣ったアオリイカ。
透き通るような身を、最高の状態で持ち帰りたいと思うのは全釣り人の願いです。
しかし、クーラーボックスでの**「冷やし方」**を一つ間違えるだけで、その食感と味は劇的に劣化してしまいます。
結論から言います。 アオリイカの冷却に、コンビニなどで売っている「真水氷」を使うのはNGです。
ベストなのは、釣り場の海水で作った**「海水氷」**です。
「なぜ氷が違うだけでそんなに差が出るの?」
その答えは、学校の理科で習った**「浸透圧(しんとうあつ)」**に隠されています。
1. なぜ「真水氷」はNGなのか? 答えは「浸透圧」
最大の理由は、イカが真水に触れると**「浸透圧」**の作用で身が劣化してしまうからです。
⬛ イカの身が「水ぶくれ」になる現象
海の生き物であるアオリイカの体液には、当然ながら塩分が含まれています。
一方、水道水や市販のロック氷が溶けた「真水」には、塩分がほとんどありません。
この「塩分濃度の違う液体」が触れ合うと、濃度の低い方(真水)から高い方(イカの体)へ、水分だけが移動する現象が起きます。
これが「浸透圧」です。
分かりやすく言うと… イカの細胞が、周りの真水をスポンジのように急速に吸い込み、パンパンに「水ぶくれ」状態になってしまうのです。
⬛ 真水が引き起こす「3つの致命的な劣化」
この「水ぶくれ」状態が、アオリイカの美味しさを破壊します。
① 旨味の流出(味が薄くなる) パンパンに膨らんだ細胞膜は、簡単に破れてしまいます。
その結果、細胞内部に閉じ込められていた旨味成分(アミノ酸など)が、吸い込んだ水と一緒に出て行ってしまいます。
② 食感の悪化(ブヨブヨになる) 細胞が破壊されることで、イカ本来の「コリコリ」「パツン」とした歯ごたえが失われ、水っぽくブヨブヨとした最悪の食感に変わります。
③ 見た目の悪化(白ボケ) 新鮮なイカの証である「透明感」が失われ、身が白く濁ってしまいます。
釣り人が「白ボケ」と呼ぶ現象です。
これは鮮度が落ち、水分でふやけたサインです。
【最悪のNG例】 クーラーボックスの底に真水氷を敷き、その上に締めたイカを直接置くこと。 氷が溶けて「真水のプール」ができ、そこにイカが浸かってしまうと、わずか数時間で劣化が始まります。
2. なぜ「海水氷」がベストなのか?
では、なぜ「海水氷」なら良いのでしょうか。
それには「浸透圧」と「冷却温度」という2つの明確な理由があります。
理由1:浸透圧が起きない(旨味を閉じ込める)
これが最大のメリットです。
海水氷は、溶けてももちろん「海水」です。 海水は、アオリイカの体液とほぼ同じ塩分濃度です。
そのため、浸透圧の差が発生せず、イカの細胞が余計な水分を吸い込むことがありません。
旨味成分や食感を損なうことなく、釣ったそのままの状態で鮮度をキープできます。
理由2:真水氷より冷たい(強力な冷却力)
あまり知られていませんが、海水氷は真水氷よりも強力な冷却能力を持っています。
- 真水が凍る温度(氷点):0℃
- 海水が凍る温度(氷点):約 -1.8℃ ~ -2℃
これは「氷点降下」と呼ばれる科学現象で、塩分などの不純物が混ざると凍る温度が下がるためです。
つまり、**海水氷は「0℃以下の氷」**なのです。 この強力な冷却力で、イカをより素早く、
より低温で締めることができ、鮮度維持に圧倒的に有利になります。
3. 簡単!「最強の海水氷」の作り方と使い方
海水氷の準備は非常に簡単です。
▼ 作り方
- 釣行前日までに、釣り場の「きれいな海水」を空のペットボトル(500mlや2L)に汲んでおきます。
- (超重要) ペットボトルが破裂するのを防ぐため、満タンにせず、8~9分目程度でキャップを閉めます。
- そのまま冷凍庫でカチカチに凍らせれば完成です。
▼ おすすめの使い方
- アオリイカを締めたら、ジップロックやビニール袋に入れ、空気を抜いて密閉します。(イカを乾燥させないため)
- クーラーボックスの底に海水氷を敷き、その上に袋に入れたイカを置きます。
- イカの量が多い場合は、海水氷でイカを挟む「サンドイッチ状態」にすると完璧です。
まとめ:釣果の差は「氷」で決まる
釣ったアオリイカを最高に美味しく食べる秘訣は、釣り上げた直後の「冷却」にあります。
- 絶対NG: 真水氷(浸透圧で旨味流出、白ボケ、水っぽくなる)
- 最強BEST: 海水氷(浸透圧ゼロで旨味キープ + 強力な冷却力)
どうしても真水氷しか用意できない場合は、イカを袋で厳重に密閉し、スノコを敷くなどして
「氷の溶け水(真水)に絶対に浸からせない」**工夫をしてください。
釣行前日にペットボトルを凍らせる一手間が、食卓での感動の味に直結します。ぜひお試しください。


