「串本で釣れたブダイは、みなべや田辺で釣れるイガミと比べて、なんだか味が違う気がする…」。
南紀の釣り人の間で、まことしやかに語られるこの噂。 単なる「気のせい」や「個体差」なのでしょうか。
結論から言うと、その噂は**「科学的根拠が十分にある」**と考えられます。
この記事では、AIが生物学・海洋学的な観点から、なぜ同じ紀伊半島沿岸でも獲れる場所によって
ブダイの味に違いが出ると考えられるのか、その理由を徹底的に解説します。
そもそもブダイ(イガミ)の味は何で決まる?
ブダイの味を左右する最大の要因は、その**「食性(食べているエサ)」**です。
ブダイ(イガミ)は、強力な歯で岩礁に付着した海藻をガリガリと削り取って食べる**「藻食性(そうしょくせい)」**の魚です。
人間が食べたもので体臭や体質が変わることがあるように、魚も日常的に食べているエサによって、その身の風味や脂の質が根本から決まります。
特にブダイの場合、食べた藻類(ヒジキ、ホンダワラ、テングサなど)の香りが、そのまま**「磯の香り」**として身に移ります。
これが、ブダイ特有の風味の正体です。
(※冬場に「臭い」と言われる個体がいるのも、特定の藻類を食べていることが原因とされます)
つまり、**「食べている藻類が違えば、ブダイの味も変わる」**というのが大原則です。
決定的な違いは「海流」と「藻場」
では、なぜ「みなべ・田辺」と「串本」で食べている藻類が違うのでしょうか。
その答えは、両者の海洋環境の決定的な違いにあります。
1. 串本エリア:黒潮の直接的な影響
- 特徴: 紀伊半島の最南端に位置する串本は、日本最大の暖流**「黒潮」**が最も強く、直接的にぶつかる場所です。
- 影響: 常に外洋(太平洋)の新鮮で暖かい海水が流れ込みます。これにより、透明度が高く、水温も安定して高めです。
- 結果: この環境では、黒潮の恩恵を受ける**「外洋性」の藻類**が育ちやすくなります。
2. みなべ・田辺エリア:沿岸と黒潮の混合
- 特徴: 串本よりも北に位置するみなべ・田辺エリアは、もちろん黒潮の影響下にありますが、串本ほど直接的ではありません。
- 影響: 黒潮本流から少し離れている分、河川から流れ込む栄養塩(陸からの栄養)や、沿岸特有の水質の影響も受けやすくなります。
- 結果: 串本とは異なる、**「沿岸的」あるいは「地域固有」の藻場(もば)**が形成されやすくなります。
【AIの推察】 この海洋環境の違いが、それぞれの海域に生息するブダイの「主食」に違いを生んでいます。
- 串本のブダイ → 黒潮が育むクリアな海の藻類を食べて育つ
- みなべ・田辺のブダイ → 沿岸の栄養も含む海の藻類を食べて育つ
この「主食の違い」が、釣り人が感じる「風味」や「身の質」の違いとして現れている可能性が非常に高いのです。
味に影響するその他の科学的要因
食性の違いが最大の理由ですが、ほかにも味の違いを生む可能性のある要因は存在します。
① 水温と代謝の違い
串本は黒潮の影響で、他のエリアより年間平均水温がわずかに高い傾向があります。
水温が違えば、魚の代謝活動や脂の蓄え方も変わってきます。
ブダイは脂の多い魚ではありませんが、このわずかな代謝の違いが、身の締まりや旨味の質に影響を与える可能性は否定できません。
② 旬(産卵期)のわずかなズレ
魚の味は、産卵期を境に大きく落ちます。
もし、海域による水温差や環境の違いで、産卵期(ブダイの産卵期は夏~秋とされることが多い)
にわずかな「ズレ」が生じている場合、「Aの場所ではもう味が落ちたが、Bの場所ではまだ美味しい」という時期的な差が生まれます。
この「特定の時期の体験」が、「あっちのブダイは味が違う」という印象を強めている可能性もあります。
③ 釣り人による「処理」の違い
これは科学的な魚自体の違いではありませんが、見逃せない要因です。 魚の味は、**釣った直後の「締め方」と「血抜き」**で劇的に変わります。
例えば、串本で釣った際に完璧な活け締めと血抜きを行い、みなべで釣った際には処理が甘かった場合、それは当然「串本の魚が美味しかった」という記憶になります。
同じ釣り人でも、その時々の処理の丁寧さによって、味の評価は大きく変わってしまいます。
結論:噂は本当!地域の「藻場の違い」が「味の違い」を生む
「みなべ・田辺と串本でブダイの味が違う」という噂は、単なる気のせいやプラシーボ効果では
なく、科学的根拠に基づいた「事実」である可能性が極めて高いです。
最大の理由:
- 串本(黒潮直撃)と、みなべ・田辺(沿岸+黒潮)では、海洋環境が異なる。
- その結果、そこに生える藻類(藻場)の種類や構成が異なる。
- ブダイはそれらの藻類を主食とするため、食べた藻の違いがそのまま身の風味の違いとなって現れる。
もちろん、個体差や処理の差もありますが、「海域によって味が違う」というのは、非常に理にかなった話です。
もしあなたがその違いを感じ取れるのであれば、あなたの舌は、その海域の**「生態系そのもの」**を繊細に味わっていると言えるでしょう。


