最初に
・アオリイカは目でエサを探す生き物です。
・鼻も耳もほぼ使わず、視覚と触腕で生きています。
・だからこそ「目」が異常に発達しています。
・しかも魚とはまったく違う進化をたどっています。
この「魚とは違う目」という点を伝えると、展示水槽の説明としても非常に受けが良くなります。
「このイカ、ちゃんとこっち見てるんです」と言うと、お客さんは必ず水槽に顔を近づけます。
アオリイカの目は「カメラ型の完成形」
・人間の目
・タコやイカの目
・高等な魚の目
実はどれも「カメラ眼」と呼ばれるタイプで、光をレンズで集めて網膜で像を結ぶ仕組みは同じです。
ところが
アオリイカ(ツツイカ類)の場合は、
水の中で暮らすことに完全に最適化された“水中カメラのような眼”になっています。
特徴を分解するとこうなります。
・大きく飛び出した球形の眼球
・水との屈折差を計算した丸いレンズ
・光量に応じて形を変える瞳孔
・広い視野を確保するための眼球の位置
・急激な光変化にもすぐ対応できる調節力
人間の目よりも「水中での見やすさ」を優先したつくりになっています。
この独特な瞳孔の形は何か?
写真のアオリイカの目を見ると、真円ではなく。
くるっと巻いた鉤型のような、曲線を描いた瞳孔が見えます。
これは
・入ってくる光の量を細かくコントロールする
・上下左右の明るさの差を調整する
・水面からの強い光と、横方向の弱い光を同時にとらえる
ための形だと考えられています。
魚の瞳孔はほとんどが丸型です。
ところがイカは、環境に応じてかなり変形させます。
明るいときは細く。
暗いときは丸く近づき、光をたくさん取り込みます。
つまり
アオリイカの瞳孔は
「光の少ない海中でも見え、しかもまぶしい斜光でも見えるようにする“可変式の窓”」
だと思ってください。
どこまで見えているのか?視野はとても広い
アオリイカの目は、頭の左右に大きく張り出しています。
これは魚のように前だけを見るためではなく。
周囲をほぼぐるりと監視するための配置です。
・片目だけでも横方向はかなり広く見える。
・左右の目を合わせると、後ろ側まである程度カバーできる。
・真正面だけはやや死角になりやすいが、体の角度で補う。
おおまかに言うと、270〜300度くらいの広い視野を持つと考えてよいです。
魚でもここまで見える種類はそう多くありません。
広い視野が必要なのは
・外敵(青物・マダコ・大型魚)に狙われやすい
・自分も獲物を狙うハンターである
という二つの理由からです。
立体視はできるのか?
「横に目がついていると、距離感がつかめないのでは?」とよく聞かれます。
アオリイカは、獲物を捕る最終段階では
・体を少し斜めにする
・エンペラで姿勢を微調整する
・真正面にエサがくるようにしてから触腕を伸ばす
という行動をします。
これは、
「獲物を自分の一番見やすい位置=両眼の視野が重なる位置に持ってきてから捕る」
という動きです。
つまり広角で見つけて、最後は狭角で仕留める。
カメラでいう「サーチ→ピント合わせ」の2段構えで見ているわけです。
夜間も見えるのか?
結論から言います。
アオリイカは夜でもかなり見えています。
理由は3つあります。
・大きな眼球で光をたくさん取り込める
・瞳孔の開閉幅が大きい
・光を感じる細胞が暗所向けに発達している
イカやタコは、魚よりも“コントラストを見る”能力に優れています。
色がはっきり見えるというより。
「黒いもの」「動いたもの」「光を反射したもの」をすばやくとらえます。
だから夜の常夜灯下でエギに襲いかかるし。
月夜と闇夜で反応が変わります。
釣り人がヘッドライトを当てると、サッと色を変えるのもこのためです。
色は見えているのか?色覚の話
ここは誤解が多いので、展示でも説明しやすいようにしておきます。
・アオリイカは人間のように“多色で世界を見ている”わけではない。
・しかし明るさとコントラスト、偏光にはとても敏感。
・「水中で光ったもの」「反射したもの」「シルエットになったもの」はよく見える。
つまり、
「赤だから釣れた」「この色にだけ反応した」というのは
色そのものよりも
・水中での明るさの差
・輪郭のくっきりさ
・背景とのコントラスト
が効いている可能性の方が高い、ということです。
普通の魚の目と何が違うのか
魚と比べると、アオリイカの眼の特徴はとても説明しやすくなります。
・魚は水圧変化に強く、目がへこみに収まっている。
・アオリイカは水圧よりも“見やすさ”を優先して外に飛び出している。
・魚は前方と上をよく見るが、イカは横と周囲をよく見る。
・魚の瞳孔は丸いが、イカは光量に応じて変形させる。
・魚は体で隠れている部分が多いが、イカは視野を妨げるヒレや鱗がない。
だから並べてみると、
アオリイカの目は「観察するための目」
魚の目は「生き延びるための目」
という違いがハッキリします。
あの“ドッジボールみたいな大きさ”はなぜ必要なのか
アオリイカは、体の大きさに対して目がとても大きい生き物です。
これは水中で光がすぐに減ってしまうから。
暗くてコントラストが低い世界でも、敵とエサを見分けるには“大きいレンズ”が必要になります。
カメラも同じで。
暗い場所を撮るときは大きいレンズが有利です。
アオリイカの目はこれを体に内蔵しているようなものです。
展示飼育で説明するときのポイント
・「このイカ、ちゃんとあなたを見ています」と言う
・「怒ると真っ黒になるのは目で見ているからです」と続ける
・「光の量に合わせて瞳の形が変わります」と言ってライトを当てる
・「他のイカよりも視力がいいから、アオリイカは釣りでも人気なんです」と結ぶ
これだけでお客さんは必ず水槽に近づきます。
カメラを構えてくれれば、それがそのままSNS拡散になります。
まとめ
・アオリイカの眼はカメラ型で、水中視認に特化している。
・瞳孔の形は光をコントロールするためで、魚とはまったく違う。
・視野はとても広く、周囲をほぼぐるりと見渡せる。
・夜間でも見えており、コントラストに敏感。
・色をきれいに見るというより、動きと明るさをとらえるのが得意。
・展示では「見ているイカ」という切り口で説明すると刺さる。
現在、釣太郎みなべ店で展示飼育中です。


