1kg数万円。
「幻」と呼ばれるシロアマダイ(シラカワ)の全てを解説。
アカアマダイとの違い、浅場に潜む意外な生態、極上の味(刺身・松笠揚げ)、そして専門の釣り方まで。
なぜシロアマダイは最高峰なのか。 その秘密に迫ります。
【幻の最高級魚】シロアマダイ(白甘鯛)とは。
その魚は、市場で「シラカワ」とも呼ばれます。
写真のように「天然」の札がつけば、とんでもない高値がつく魚。
それが「シロアマダイ(白甘鯛)」です。
高級魚として知られるアマダイ。 その中でも「味・希少性・価格」のすべてにおいて頂点に君臨し、
釣り人、料理人、食通のすべてが憧れる「幻の魚」です。
なぜ、シロアマダイはそこまで特別扱いされるのでしょうか。
今回は、この日本最高峰の魚の一角であるシロアマダイの生態、味、見分け方、釣り方まで、徹底的に詳しく解説します。
シロアマダイとは。
アマダイの王様「シラカワ」
シロアマダイの基本情報(分類・分布)
シロアマダイ(学名:Branchiostegus albus)は、スズキ目キツネアマダイ科アマダイ属に分類される魚です。
名前に「タイ」とつきますが、マダイやクロダイとは異なるグループに属します。
分布域は広く、若狭湾から九州西岸までの日本海、鹿島灘から豊後水道までの太平洋沿岸、東シナ海などに生息します。
写真のような「天然」ものが南紀地方で水揚げされることも、もちろんあります。
なぜ「幻の魚」と呼ばれるのか
シロアマダイが「幻」と呼ばれる理由は、その「希少性」にあります。
アマダイ属には、日本近海で主に漁獲される3種類(シロアマダイ・アカアマダイ・キアマダイ)
がいますが、シロアマダイの漁獲量は他と比べて圧倒的に少ないです。
たまに網にかかる程度で、狙って大量に獲れる魚ではありません。
その希少価値から、水揚げされてもほとんどが高級料亭や専門店に直行し、一般の
スーパーマーケットの鮮魚コーナーに並ぶことはまずありません。
この希少性と、後述する「味」が相まって、シロアマダイを「幻の魚」たらしめているのです。
アマダイ3種(シロ・アカ・キ)の簡単な見分け方
シロアマダイを語る上で、他のアマダイとの違いを知ることは非常に重要です。
特に最も流通量の多い「アカアマダイ」との違いは、プロでも迷うことがあります。
最大のライバル「アカアマダイ」との違い
- アカアマダイ: 最もポピュラーなアマダイ。
- 最大の特徴は「目の斜め下(頬)」に「白く輝く三角形の模様」があることです。
- また、体色もシロアマダイより赤みが強い傾向があります。
- シロアマダイ: アカアマダイにある「目の下の白い三角模様」がありません。
- 新鮮なうちは体色が淡いピンク色(淡紅色)で、腹部が真っ白です。
希少な「キアマダイ」との違い
- キアマダイ: 名前(黄甘鯛)の通り、顔やヒレ、特に尾ビレが鮮やかな黄色を帯びています。 また、目の下から口元にかけて白いラインが入るのが特徴です。 シロアマダイ以上に希少で、市場に出ることは稀です。
シロアマダイ最大の特徴(まとめ)
- 目の下にアカアマダイのような白い三角模様がない。
- 体全体が赤みがかった白(淡紅色)で、腹部が白い。
- アカアマダイと比べると、目がやや小さい。
- 頬のウロコが小さく、大きさが揃っている。
この見分け方を知っていれば、もし幸運にも魚屋で出会えた時、本物を見抜くことができます。
シロアマダイの生態。
「浅場に潜む」という意外な事実
シロアマダイの「幻」たる所以は、その生態にも隠されています。
生息水深(アカアマダイより浅い)
アマダイ釣りと言えば、水深80m〜200mといった「深場」を狙うイメージが強いです。
事実、アカアマダイやキアマダイはそうした深場の砂泥底を好みます。
しかし、シロアマダイは違います。
シロアマダイが主に生息するのは、水深30m〜100m程度。 アカアマダイよりも「明らかに浅い場所」の砂泥底を好むのです。
この生息域の違いが、漁獲方法や釣り方の違いにも直結しています。
食性と産卵期
シロアマダイは海底の砂泥底に穴を掘って潜み、甲殻類(エビ、カニなど)や小魚を捕食しています。
産卵期は非常に長く、研究によれば12月から翌年の5月頃までとされています。
この長い産卵期が、脂が乗る「旬」にも関係してきます。
味と市場価値。
なぜ1kg数万円の超高級魚なのか
魚類トップクラスと評される「味」
シロアマダイは、数ある日本産魚類の中でも「最高峰の味」と評されます。
その身質は、アマダイ特有の水分量の多い柔らかさ(これが「甘い」の語源とも言われる)を
持ちつつも、アカアマダイよりも身が締まり、水っぽさがありません。
最大の魅力は「脂の質」と「濃い旨味」です。
上品でクセのない脂が身全体に溶け込んでおり、加熱しても身が硬くならず、ふっくらと仕上がります。
生食(刺身)でも、熟成させずとも強い甘みと旨味が感じられるほどです。
この「上品な甘み」「豊かな脂」「濃縮された旨味」の三拍子が揃った完璧なバランスが、
シロアマダイを最高峰の食味たらしめています。
旬の時期は「晩秋から冬」
産卵期が12月頃から始まるため、その直前、最も脂を蓄える「晩秋から冬(9月〜12月頃)」が最高の旬とされています。
この時期のシロアマダイは、まさに別格の味わいです。
驚愕の市場価格
希少性と最高の味。 この二つが組み合わさった結果、シロアマダイの市場価格は高騰します。
サイズにもよりますが、1kgを超えるような良型になると、卸売市場で**「1kgあたり10,000円」**を超えることは珍しくありません。
時期や鮮度、状態が最高であれば、1kgあたり30,000円、時には50,000円というとんでもない値がつくこともあります。
まさに「白いダイヤ」とも呼べる超高級魚です。
料理人が愛する味。
シロアマダイの絶品料理法
シロアマダイを手に入れた料理人がまず考えるのは、そのポテンシャルをいかに引き出すかです。
鮮度が命。
まずは「刺身」と「昆布締め」
鮮度が良ければ、まずは刺身です。
皮目を軽く炙って「焼霜造り」にすると、皮下の脂が溶け出し、香ばしさと旨味が爆発します。
身の甘さをダイレクトに味わうなら、昆布締めも最高です。
昆布の旨味が浸透し、身がねっとりと締まり、極上の味わいになります。
アマダイの真骨頂「松笠揚げ(鱗揚げ)」
アマダイ料理の華といえば、ウロコをつけたまま揚げる「松笠揚げ」です。
シロアマダイのウロコはアカアマダイよりもしっかりしていますが、熱した油をかけることで
パリパリ、サクサクの食感に立ち上がります。
中の身はふっくらとジューシーに蒸し上がり、この食感のコントラストは他の魚では味わえません。
焼いても極上「若狭焼き」と「究極の干物」
アマダイの焼き物といえば「若狭焼き(酒と醤油を塗りながら焼く)」が有名です。
シロアマダイの脂と旨味は、このシンプルな調理法で最大限に引き立ちます。
また、軽く塩をして「一夜干し」にすると、旨味が凝縮されます。
専門家の中には「シロアマダイの干物は、塩焼きをはるかに凌駕する」と評する人もいるほどです。
最後の一滴まで「酒蒸し」と「潮汁」
もちろん、蒸し物や汁物も絶品です。 酒蒸しにすれば、ふっくらとした身と上品な出汁を楽しめます。
アラから取る「潮汁」は、骨の髄から染み出た上品な脂と旨味が溶け出し、最後の一滴まで
飲み干したくなる至高のスープとなります。
「幻」は釣れるのか。
シロアマダイ専門の釣り方
かつては「釣れたらラッキー」の魚でしたが、近年、その生態(浅場にいること)が研究され、
専門に狙う遊漁船も出てきました。
ターゲットとしてのシロアマダイ
アカアマダイより浅場(水深30m〜100m)の砂泥底にいるため、ポイント選定が重要です。
アカアマダイと明確に釣り分ける技術が求められます。
釣り方(1) 天秤仕掛け(エサ釣り)
オーソドックスなアマダイ釣りと同様、天秤仕掛けの2本バリなどで狙います。
エサは、青イソメ(最強との説あり)、オキアミ、ホタルイカ、キビナゴなどが使われます。
底からオモリをわずかに切った状態で、ゆっくりと誘いをかけ、砂煙を上げてアピールします。
エサ取りも多い釣り場なので、こまめな手返しが重要です。
釣り方(2) アマラバ(タイラバ)
近年、人気急上昇中なのが「アマラバ」と呼ばれるタイラバを使った釣り方です。
タイラバを海底まで落とし、オモリで底をトントンと叩くようにして砂煙を上げ、シロアマダイにアピールします。
その後はデッドスロー(超ゆっくり)で巻き上げるのがコツです。
まとめ。
シロアマダイ(白甘鯛)は、
- アカアマダイより浅場に住む、漁獲量の少ない「幻の魚」。
- 目の下の三角模様が無い、目が小さい、などで見分けられる。
- 旬は晩秋から冬で、1kg数万円の値がつく超高級魚。
- 「上品な甘み・脂・濃い旨味」を兼ね備えた日本最高峰の味。
- 刺身、松笠揚げ、焼き物、すべてが絶品。
- 近年は「アマラバ」など専門の釣り方も確立されつつある。
もし一生に一度、この「幻の魚」に出会う機会があれば、その価格に怯まず、ぜひ一度は味わっていただきたい。
それだけの価値が、この魚にはあります。


