イカ釣りをしていると、突然イカが「墨」を吐いて視界を真っ黒にされることがあります。
この黒い液体 ― いわゆる「イカ墨」には、単なる煙幕以上の意味が隠されています。
本記事では、イカ墨がなぜ黒いのか、その成分と生物学的役割を、釣り人や料理愛好家の
視点から徹底解説していきます。
イカ墨が黒い理由:メラニン色素の存在
イカ墨の黒さの正体は、メラニン色素です。
人間の髪や肌の色を決めるのも同じメラニンで、イカ墨の主成分もこの色素に由来しています。
メラニンは光を吸収する性質が強く、濃い黒色を生み出します。
これによりイカ墨は海中で非常に目立ちにくくなり、捕食者からの逃避に役立つのです。
イカ墨の成分
イカ墨の袋に含まれる液体は、単なる「黒い水」ではありません。主な成分は以下の通りです。
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メラニン色素:黒色の正体。視覚的なカモフラージュ効果を生む。
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ムチン(粘液成分):粘り気を持たせ、海中で墨が拡散しにくくなる。
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酵素やアミノ酸:魚や捕食者の嗅覚をかく乱する作用があるとされる。
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少量の金属イオン(鉄・銅):メラニン生成に関与している。
この粘性と黒さの組み合わせにより、「視覚」と「嗅覚」の両方を遮断する煙幕として機能します。
生物学的役割
1. 捕食者からの防御(煙幕効果)
イカが敵に襲われた際、墨を吐き出して視界を遮ります。
魚やイルカなどの捕食者は一瞬動きを止め、その隙にイカは逃走します。
2. ダミー効果(デコイ)
イカ墨の塊はただ広がるだけでなく、イカの形に似た塊となって残ることがあります。
これにより、敵は墨の塊をイカと勘違いし、イカ本体はその間に逃げることが可能です。
3. 化学的かく乱
一部研究では、イカ墨に含まれる成分が魚の嗅覚や味覚を鈍らせる可能性が指摘されています。
つまり、**単なる黒い液体ではなく「多機能な防御ツール」**なのです。
イカ墨の料理利用と人間への効果
イカ墨は防御用ですが、私たち人間にとっては栄養と旨味の宝庫です。
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タウリン:疲労回復、肝機能サポート。
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鉄分:貧血予防。
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亜鉛:免疫力維持。
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メラニン:抗酸化作用が期待される。
スペインの「イカ墨パエリア」やイタリアの「イカ墨パスタ」、沖縄料理の「イカ墨汁」など、世界中で珍味として親しまれています。
まとめ:イカ墨はただの黒い液体ではない
・黒さの正体はメラニン色素。
・粘り気や成分により、煙幕・デコイ・嗅覚かく乱という多重の防御機能を持つ。
・料理に使えば、栄養価と独特の旨味を楽しめる。
釣り人にとっては厄介な「墨攻撃」ですが、科学的に見ればイカの生存戦略の結晶であり、食卓では高級食材として活躍するのです。


