上記写真は田辺観光協会より
ナショナルトラスト運動とは?
ナショナルトラスト運動は、市民が自らの寄付や募金で貴重な自然環境や歴史的建造物を買い取り、永続的に守り、次世代に残す市民参加型の自然・文化保護運動です。
開発や都市化から身近な自然を守る「市民の力による保全」が核心で、国や自治体任せにせず、国民(地域住民)自身が主体となって行動します。
発祥は1895年のイギリス。
産業革命後の急速な都市拡大で美しい田園や歴史的建造物が失われていく危機感から、3人の市民(オクタヴィア・ヒルら)が「The National Trust」を設立しました。
以降、世界に広がり、日本でも1970年代から本格化。イギリスでは現在、数百万ヘクタールの土地や城館などを保有・管理しています。
日本では、土地を買い取って「市民の共有財産」として守る点が特徴。
税制優遇を受けやすい公益法人認定を受けたり、行政と連携したりしながら活動します。
身近な里山、湿原、海岸などの保護に活用され、「トトロの森」(多摩丘陵)や知床の100平方メートル運動などもこの流れに位置づけられます。
天神崎の歴史:日本ナショナルトラスト運動の先駆け和歌山県田辺市(みなべ町・白浜エリアに近い)の天神崎は、日本におけるナショナルトラスト運動の発祥の地として知られています。
田辺湾北岸に突き出た岬で、日和山を中心とする緑豊かな丘陵と、干潮時に現れる広大な岩礁(磯)が特徴。
暖流の影響で多様な海洋生物が生息し、森と海が一体となった豊かな生態系が残っています。
昭和58年(1983年)には『日本の自然100選』にも選ばれました。
開発危機と市民の立ち上がり(1974年~)
- 1974年(昭和49年):高級別荘地開発計画が浮上。開発業者による造成許可申請が出され、自然破壊の危機が迫りました。
- 地元市民有志は「一度壊れた自然は元に戻せない」と危機感を抱き、**「天神崎の自然を大切にする会」**を結成(2月)。署名運動を開始し、1万6千筆を集めて田辺市・和歌山県に陳情しました。
- 行政的な保護が難しい中、**「市民地主運動」**へシフト。全国から募金を呼びかけ、開発業者から土地を直接買い取るという、当時としては画期的な手法を選びました。これが日本初の本格的なナショナルトラスト運動となりました。
具体的な保全活動の歩み
- 1976年:熱意表明募金で約393万円を集め、第1次保全地(2,390㎡)を350万円で購入。
- 1977-1978年:市民地主運動を本格化。個人の借入金なども活用し、第2次保全地(6,176㎡)を購入。
- 以後、寄付金と行政補助を組み合わせ、徐々に買い取りを進める。1986年には財団法人化(自然環境保全法人第1号認定)。2010年には公益財団法人へ。
- 現在まで、約8.7ヘクタール(目標の約半分)を保全。清掃、植樹、自然観察会(現在まで73回以上実施)、子どもの絵画展なども継続。田辺市との協力も欠かせません。
外山八郎さんや玉井済夫さん(相談役)ら先駆者の尽力と、全国からの共感が運動を支えました。第1回ナショナルトラスト運動全国大会も天神崎・田辺市で開催され、全国に波及しました。天神崎から学ぶ自然保護の教訓天神崎の事例は、**「市民の小さな一歩が大きなムーブメントを生む」**ことを教えてくれます。
- 開発優先社会へのアンチテーゼ:行政規制だけでは守れない身近な自然を、市民のお金で買い取る「所有を通じた保全」。
- 持続可能性:土地取得だけでなく、管理・教育活動を組み合わせ、次世代へのバトン渡し。
- 全国的連帯:地元発の運動がマスコミ報道で全国に広がり、寄付が集まる好循環。
- 現代的意義:気候変動や生物多様性危機の今、ナショナルトラストは「自然資本」を守る有効な手段。環境教育の場としても機能しています。
天神崎は今も、釣り、散策、磯遊び、絶景(ウユニ塩湖のような干潮時の鏡張り)で人気。訪れることで、保全の歴史を実感できます。
まとめ:私たちにできることナショナルトラスト運動は「知る・参加する・寄付する」から始められます。
天神崎の自然を大切にする会では、寄付やボランティアを募集中。
あなたの住む地域にも似た運動があるかもしれません。まずは身近な自然を見つめ、守る意識を広げましょう。参考・訪問情報
- 公式サイト:天神崎の自然を大切にする会(https://www.tenjinzaki.or.jp/)



