魚は釣れた瞬間から劣化が始まります。
そのスピードを左右するのが「氷」です。
南紀の現場で体感するのは、
海水氷と真水氷では仕上がりが明確に違うという事実です。
今回は感覚論ではなく、温度・浸透圧・ドリップ・臭い成分という観点から徹底比較します。
① 冷却温度の違い
真水氷の温度は約0℃。
一方、海水氷は塩分を含むため凝固点が下がり、−1〜−2℃付近まで下がります。
【比較】
真水氷:0℃前後
海水氷:−1〜−2℃
この1〜2℃差が、TMA(生臭さ成分)生成速度と細菌増殖に大きく影響します。
温度が1℃下がると細菌の増殖速度は体感で2割以上抑えられると言われています。
② 冷却スピード
真水氷は溶けると水になり、魚体に密着しにくい。
海水氷は溶けても塩水で魚体に絡みつき、熱伝導効率が高い。
【結果】
海水氷の方が初期冷却が速い。
急速冷却は
・自己消化酵素の抑制
・変色の抑制
・臭い発生の抑制
に直結します。
③ 水ぶくれ・氷焼け
真水氷は浸透圧差により身が水を吸い、ふやけやすい。
これがいわゆる「氷焼け」です。
海水氷は体液濃度に近いため水分移動が起きにくい。
【比較】
真水氷:ドリップ増加・身が柔らかくなる
海水氷:ドリップ少ない・身が締まりやすい
特にアオリイカは差が顕著に出ます。
④ 臭いの発生
魚の生臭さは主に
・TMA生成
・細菌増殖
・脂質酸化
が原因です。
海水氷は低温維持によりこれらを抑制します。
「臭いを消す」のではなく
「臭いを出させにくくする」
これが科学的な正解です。
⑤ 旨味保持
ドリップにはアミノ酸などの旨味成分が含まれます。
真水氷では浸透圧差によりドリップが増えやすい。
海水氷は細胞破壊が少ない。
【比較】
真水氷:旨味流出しやすい
海水氷:旨味保持しやすい
刺身で差が分かります。
⑥ 変色
変色は酸化と酵素反応によるもの。
低温環境ではこれらの反応が遅くなります。
海水氷はより低温帯を維持できるため
血合いの黒ずみやイカの白化を抑えやすい。
⑦ 食中毒リスク
海水氷は殺菌しません。
しかし低温維持により
細菌増殖スピードを遅らせます。
真水氷との差は、夏場ほど大きくなります。
総合比較まとめ
冷却温度
海水氷 > 真水氷
冷却スピード
海水氷 > 真水氷
水ぶくれ抑制
海水氷 > 真水氷
臭い発生抑制
海水氷 > 真水氷
旨味保持
海水氷 > 真水氷
変色抑制
海水氷 > 真水氷
溶けた後の影響
海水氷は塩水なので安心
真水氷は水っぽくなる
結論
海水氷は魔法ではありません。
理屈です。
・低温
・浸透圧
・急速冷却
この3点が鮮度を守ります。
特に
アオリイカ
青物
グレ
チヌ
南紀の主力魚種とは相性が良い。
氷は最後の仕上げではありません。
釣った瞬間からの勝負です。
氷を変えるだけで、魚の未来は変わります。

