みなさん、ボラを釣った時、なんて呼んでいますか。
「小さいからイナッコかな?」 「いや、これはハクだろう」
仲間内で呼び名が違って、混乱したことはありませんか。
実はボラは、ブリやスズキと並ぶ日本を代表する「出世魚(しゅっせうお)」です。
成長するにつれて名前が変わり、しかも関東と関西でその呼び名が微妙に違うという、ややこしくも面白い特徴を持っています。
今回は、釣り人なら知っておきたい、ボラの大きさごとの呼び名と、その地域差について詳しく解説します。
これを読めば、「とどのつまり」ボラ博士になれるはずです。
1. なぜ名前が変わる?出世魚としてのボラ
江戸時代、武士や学者は出世するにつれて名前を変える習慣がありました。 そこから、成長に伴って名前が変わる魚を「出世魚」と呼び、縁起が良いものとして祝宴などで好んで食べられました。
ボラもその一つ。 特に「イナ」や「ボラ」は、かつて高級魚として扱われ、その名前の変化は人々の生活に深く根付いていたのです。
2. 【関西版】ボラの呼び名とサイズ(和歌山・南紀エリア)
まずは、私たち釣太郎の地元、関西での呼び名から紹介します。 関西の特徴は、一番小さな稚魚を「ハク」と呼ぶところです。
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ハク(~3cm前後): 春先、河口や港内でキラキラと光る大群を見かけませんか。 あれがボラの赤ちゃん、「ハク」です。 体が銀箔(ぎんぱく)のように輝いていることから名付けられました。
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オボコ(3cm~10cm): 少し大きくなった幼魚です。 子供っぽい可愛らしい顔つきから、子供や処女を意味する「おぼこい」「おぼこ娘」の語源になったと言われています。
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スバシリ(10cm~20cm): このサイズになると泳ぐ力がつき、水面をすばしっこく走り回ることから「スバシリ」と呼ばれます。
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イナ(20cm~30cm): 若者のような青黒い背中を持つことから、粋(いき)な若衆を指す「鯔背(いなせ)」の語源になりました。 このサイズから、脂が乗り始めて美味しくなります。
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ボラ(30cm~50cm): 一人前のサイズです。 刺身や洗いで食べるなら、このクラス以上が最高です。
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トド(50cm以上): これ以上大きくならない、最終形態です。
3. 【関東版】ボラの呼び名とサイズ
続いて関東です。 関西と似ていますが、スタート地点と、ルアーマンにお馴染みのあの名前が入るのが特徴です。
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オボコ(~10cm): 関東ではハクという言葉はあまり使わず、稚魚から幼魚までをまとめてオボコと呼ぶことが多いです。
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イナッコ(10cm~18cm): ここが最大の違いです。 「イナの子」という意味で、イナの一歩手前をイナッコと呼びます。 シーバス(スズキ)釣りのルアーマンにとっては、最も馴染み深い名前ではないでしょうか。
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スバシリ(15cm~25cm): イナッコより少し大きいサイズを指すこともありますが、イナッコと同義で使われることもあります。
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イナ(20cm~30cm): ここは関西と同じです。
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ボラ(30cm~50cm): ここも共通です。
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トド(50cm以上): やはり最後はトドです。
4. 釣り人がよく使う「ハク」と「イナッコ」
地域差はあるものの、最近は釣りの情報がネットで広まり、言葉が混ざり合っています。
特にルアーフィッシングの世界では、以下のように使い分けるのが全国的なスタンダードになりつつあります。
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ハクパターン: 春、数センチのマイクロベイト(ハク)を偏食するシーバスを狙う釣り。
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イナッコパターン: 夏から秋、10〜15cmほどに育ったボラを捕食する大型魚を狙う釣り。
関西の釣り人でも「イナッコ」と言ったり、関東の人が「ハク」と言ったりするのは、ルアー用語として定着しているからなんですね。
5. 「とどのつまり」はボラだった?
最後に、ボラにまつわる有名な言葉を紹介します。
「とどのつまり」
「結局」「行き着くところ」という意味で使われますが、この語源はボラの最終形「トド」です。
「オボコから始まり、イナ、ボラと名前を変えて成長し、最後はトドになってこれ以上大きくならない」
つまり、「成長の行き止まり」=「結末」という意味で使われるようになったのです。
あまり良い意味で使われない言葉ですが、ボラがいかに人々の生活に浸透していたかが分かりますね。
まとめ:名前を知れば、魚への愛着が湧く
いかがでしたか。
「ハク」の輝きに春を感じ、「イナ」の背中に粋を感じ、「トド」の巨大さに歴史を感じる。
ただの「ボラ」と呼ぶよりも、その成長段階に合わせて呼び変えてみると、なんだか魚への愛着が湧いてきませんか。
南紀の海で釣れたボラが、どの呼び名に当てはまるのか。
ぜひ、釣り上げたらサイズを測って、「お、これは立派なイナだな!」なんて呼んであげてください。

