釣り人や魚屋の間では、
よくこんな会話があります。
「同じ魚でも、これは南紀の方がうまいな」
「内湾のは悪くないけど、何か軽い」
これは感覚論ではありません。
育った海の環境が、味を分けています。
内湾産と外洋産の決定的な違い
まず大枠を整理します。
内湾産と
南紀地方
のような外洋産では、
魚を取り巻く条件がまったく異なります。
内湾の特徴
・波が穏やか
・潮流が緩い
・水温変化が少ない
・プランクトン中心の餌
魚にとっては
楽に生きられる海です。
外洋(南紀)の特徴
・波とうねりが常にある
・潮が速く複雑
・水温変化が大きい
・ベイトフィッシュが豊富
魚にとっては
常に動かされる海です。
この違いが「味」にどう出るのか
結論から言います。
内湾産は「優しい味」
外洋産は「濃い味」
これは魚種を問わず、
ほぼ共通して現れます。
魚種別に見る違い
ここからは具体例です。
アオリイカ
内湾産:柔らかいが水っぽい
南紀産:張りがあり甘みが強い
内湾のアオリイカは
・動きが少ない
・水分を多く含む
そのため
口当たりは良いが、
甘みの立ち上がりが弱い。
一方、南紀産は
・浅深を頻繁に移動
・潮を受け続ける
結果
水分が締まり、甘みが凝縮
されます。
マダイ
内湾産:脂がぼんやり
南紀産:後味が切れる
内湾のマダイは
・餌が安定
・運動量が少ない
そのため
脂はあるが
キレが弱い。
南紀のマダイは
・砂地と岩礁を行き来
・潮を常に受ける
結果
脂が強すぎず、
上品で毎日食べられる味
になります。
カツオ
内湾では成立しにくい
南紀では評価が一変
カツオは
そもそも内湾向きの魚ではありません。
外洋を高速で回遊し、
止まらずに泳ぎ続ける魚です。
南紀では
・潮流
・地形
・黒潮
この条件が揃い、
・血合いが澄む
・臭みが出にくい
「南紀のカツオは生臭くない」
と言われる理由です。
グレ(メジナ)
内湾産:脂が乗りにくい
南紀産:噛むほど旨い
内湾では
波が穏やかすぎて
筋肉が鍛えられません。
南紀の磯では
・張り付く
・泳ぐ
を繰り返すため、
身の密度が段違い。
熟成耐性も高く、
日が経っても味が伸びます。
ヒラスズキ
内湾では別の魚
南紀で本領発揮
ヒラスズキは
荒れと地形がなければ成立しません。
内湾で獲れる個体は
・身が柔らかすぎる
・水分が多い
南紀産は
・身が締まり
・火を入れても縮みにくい
「魚の格が違う」
と感じる典型例です。
なぜ内湾産が悪いわけではないのか
誤解してはいけないのは、
内湾産=まずい
ではない
という点です。
・安定供給
・扱いやすさ
・万人受け
という意味では、
内湾産は非常に優秀です。
ただし
「魚本来のポテンシャル」
を引き出すのは、
外洋の方が圧倒的に有利です。
まとめ
同じ魚でも「育ち」が味を変える
同じ魚種でも
・穏やかな内湾で育つか
・荒れる外洋で育つか
この違いが
・身質
・水分量
・脂の質
・後味
すべてを変えます。
南紀の魚が
「有料でも納得」
と言われるのは、
魚が楽をして育っていないから。
これが、
内湾産との決定的な差です。

