釣り上げた直後の魚が、デッキや地面の上でバタバタと激しく暴れる光景。
「元気でいいね!」なんて思っていませんか?
実はその瞬間、魚の体内では「美味しさ」が猛スピードで失われています。
釣った魚を美味しく食べるために「早く活締め(いきじめ)しましょう」とよく言われますが、
これには明確な科学的理由があります。
今回は、暴れている魚の体内で一体なにが起きているのか、そしてなぜ「即締め」が味を
劇的に変えるのか、そのメカニズムを解説します。
暴れる=「旨味の貯金」を使い果たしている状態
魚がビチビチと暴れるとき、筋肉を激しく動かしています。
この筋肉を動かすためのエネルギー源となる物質が**「ATP(アデノシン三リン酸)」**です。
実はこのATPこそが、後に魚の「旨味(うまみ)」に変わる極めて重要な成分です。
ATPは、魚が生きている間は「運動エネルギー」として使われますが、魚が死ぬと分解されて
「イノシン酸」という旨味成分に変化します。
つまり、釣り上げた魚が持っているATPの量は、そのまま「将来の美味しさの量(旨味の貯金)」
と言い換えられます。
放置すると起きる「ATP枯渇」の恐怖
釣り上げられた魚は、酸素のない陸上で極度のストレスと酸欠状態に陥ります。
この状態で暴れさせると、魚は最後の力を振り絞り、体内のATPを大量消費してしまいます。
これを「ATPの枯渇(こかつ)」と呼びます。
暴れれば暴れるほど、旨味の元となるATPが運動エネルギーとして浪費され、ゼロに近づいていくのです。
ATPが残っていない状態で魚が死ぬと、分解される元がないため、当然「イノシン酸(旨味)」も生成されません。
その結果、「食感はあっても味がない」「なんだか水っぽい」残念な魚になってしまうのです。
さらに怖い「乳酸」と「身割れ」
ATPが減るだけではありません。
激しく暴れると、筋肉内には疲労物質である「乳酸」が蓄積されます。
乳酸が溜まりすぎると、魚の身が酸性になり、変色したり酸味を帯びたりする原因になります。
また、物理的にも筋肉が激しく収縮を繰り返すことで、身が割れたり(身割れ)、
毛細血管が切れて血が身に回ったり(うっ血)します。
こうなると、刺身にした時の見た目が悪くなるだけでなく、血生臭さの原因にもなってしまいます。
「暴れさせる」ことは、百害あって一利なしなのです。
活締めの真の目的は「ATPの保存」
では、なぜ「活締め(脳締め・神経締め)」が良いのでしょうか。
それは、**「即座に動きを止めることで、ATPの消費を強制終了させるため」**です。
脳を破壊して即死させれば、魚は暴れることができません。
暴れなければ、その時点で残っていたATPは消費されず、そのまま筋肉の中に保存されます。
たっぷりと残されたATPは、熟成の過程でたっぷりのイノシン酸に変わり、濃厚な旨味を持った刺身になります。
「釣り上げたら、暴れる前に即、締める」。
これが、釣り人だけが味わえる「究極の美味」への最短ルートなのです。
まとめ:1秒でも早く「動き」を止めよう
魚体内で起きているドラマ、お分かりいただけたでしょうか。
魚とのファイトを楽しんだ後は、魚への敬意と、美味しくいただくための責任として、速やかな処置が必要です。
暴れさせる時間を1秒でも短くすることが、食卓での感動を大きくします。
釣太郎では、スムーズに締めるためのフィッシュピックやナイフ、そして鮮度保持に欠かせない氷を
豊富に取り揃えています。
次回の釣行では、「ATPを逃さない!」という意識で、締めの作業を行ってみてくださいね。

