「アジなんて、大きさが違うだけで味は一緒でしょ?」
もしそう思っているなら、あなたは人生で損をしているかもしれません。
釣り人の間では**「小アジと尺アジ(30cm超)は別の生き物」**というのが常識です。
見た目は似ていても、その生態、食べている餌、そして脂の乗り方は、まるでマグロの赤身と大トロほど違います。
なぜここまで評価が変わるのか?
今回は、小アジと尺アジが「別物」と言われる科学的な理由と、その違いを楽しむポイントを徹底解説します。
1. 生き方が違う:「アスリート」と「貴族」の差
最大の違いは、そのライフスタイル(回遊性)にあります。
- 小アジ・中アジ(黒アジ系):回遊するアスリート多くの小アジは、外敵から身を守るために大きな群れを作り、広い海を絶えず泳ぎ回っています(回遊型)。
常に運動しているため、身は引き締まり、筋肉質。脂は控えめで、サッパリとした味わいが特徴です。
体色が黒っぽいため「セグロ(黒アジ)」とも呼ばれます。
- 尺アジ・メガアジ(黄アジ系):定住する貴族大きく育つアジの中には、餌が豊富な浅瀬や岩礁帯に定着する「居付き型」が存在します。
彼らは無駄な回遊をせず、豊富な餌を食べて太ることに専念します。
結果、体は厚みを増し、体表が黄金色に輝きます(金アジ・黄アジ)。これが「別物」と呼ばれる最高級の尺アジの正体です。
2. 食事が違う:「ヘルシー食」と「高カロリー食」
人間と同じで、何を食べているかで体質が変わります。
- 小アジの主食:プランクトン口が小さいため、アミエビなどの微細なプランクトンを吸い込んで食べます。
栄養は骨や体の成長に使われるため、脂として蓄積される分はまだ少ないのです。
- 尺アジの主食:小魚(ベイトフィッシュ)30cmを超えると、シラス、キビナゴ、イワシなどの小魚を捕食する「フィッシュイーター」へと進化します。
動物性タンパク質と高カロリーな脂質を大量に摂取するため、身全体に細かいサシ(脂)が入ります。
これが、尺アジが「全身トロ」と称される理由です。
3. 市場価値が違う:「大衆魚」と「ブランド魚」
スーパーや市場での扱いを見ると、その差は歴然です。
| 項目 | 小アジ・中アジ | 尺アジ(特に関サバ・関アジ等) |
| 価格相場 | 1匹 数十円~100円 | 1匹 1,000円~3,000円 |
| 主な用途 | 唐揚げ、南蛮漬け、干物 | 高級刺身、姿造り、寿司 |
| 扱い | パックにまとめて詰められる | 1匹ずつ丁寧に活け締めされる |
尺アジ、特に関アジなどのブランドアジは、漁獲時に網ではなく「一本釣り」されることが多く、魚体に傷がつかないよう徹底管理されています。
「扱い」のレベルが違うことも、味が別物になる大きな要因です。
4. 料理での決定的な違い
「別物」である以上、料理のアプローチも変える必要があります。
- 小アジは「食感と香り」を楽しむ骨が柔らかい特性を活かし、唐揚げや南蛮漬けで「骨ごと」味わうのが正解。アジ特有の香ばしさは、小アジの方が強く感じられます。
- 尺アジは「脂と旨味」を楽しむ加熱すると脂が溢れ出すため、まずは刺身でその甘みを体感してください。
また、尺アジで作る「アジフライ」は、一般的なアジフライとは次元が異なります。フワフワの身から肉汁が溢れ出し、まるでメンチカツのようなジューシーさを味わえます。
まとめ:釣れたサイズで「喜び」を変えよう
小アジと尺アジは、生物学的には同じ種ですが、食卓においては**「スナック」と「ステーキ」くらい違う食べ物**です。
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小アジが釣れたら → 数釣りを楽しんで、家族みんなで唐揚げパーティー。
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尺アジが釣れたら → 貴重な高級魚として、丁寧に血抜きをして刺身や極上のフライで。
「今日はアジか…」ではなく、「お!今日は回遊型か?それとも居付きの金アジか?」と観察してみてください。
その違いを知れば、アジ釣りも、その後の食事も、もっと奥深いものになるはずです。

