フグの毒(テトロドトキシン)は青酸カリの約1000倍もの強さがあると言われます。
なぜ微量で人を死に至らしめるのか?
その恐ろしいメカニズムと、フグ毒すら赤子に見える「自然界最強クラスの毒を持つ魚」
について徹底解説します。
はじめに:美味しい魚に隠された「自然界の化学兵器」
冬の味覚、フグ。
その美味しさと隣り合わせにあるのが「テトロドトキシン」という猛毒です。
サスペンスドラマなどでよく登場する毒物「青酸カリ(シアン化カリウム)」と
比較されることが多いですが、実際の毒性の強さは桁違いです。
今回は、フグ毒の本当の強さ(致死量)と、なぜそれほど効くのかというメカニズム、
そして**「フグを超える最強の毒魚」**について解説します。
1. 結論:青酸カリの「約850倍~1000倍」
毒の強さを表す際、よく比較対象になりますが、具体的な数値で見るとその差は歴然としています。
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青酸カリの致死量: 成人で約150mg~300mg
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フグ毒(テトロドトキシン)の致死量: 成人で約1mg~2mg
計算すると、フグ毒は青酸カリの約850倍から1000倍の毒性を持っています。
これは、「耳かき一杯分」どころか、「砂粒数個分」の量で、大人の人間を死に至らしめることを意味します。
2. なぜそんなに効くの?「神経を遮断する」恐怖の仕組み
なぜ、これほど微量で人が死ぬのでしょうか?
それは、フグ毒が体を溶かすからではなく、**「脳からの命令を完全に遮断するから」**です。
毒のメカニズム(神経毒)
人間の筋肉は、脳から「動け」という電気信号が神経を通って届くことで動きます。
テトロドトキシンは、この神経の通り道(ナトリウムチャネル)に蓋をして、電気信号を物理的にストップさせてしまいます。
症状の進み方
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痺れ: 手足や唇が痺れる(信号が届きにくくなる)。
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麻痺: 体が動かなくなる。
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呼吸停止: ここが致命的です。「呼吸をするための筋肉(横隔膜など)」への命令もストップするため、肺自体は無事でも、息ができなくなって窒息死します。
★最も恐ろしい点: この毒は心臓や脳そのものを破壊するわけではありません。
そのため、「意識ははっきりあるのに、指一本動かせず、声も出せず、呼吸だけが止まっていく」
という地獄のような苦しみを味わうことになります。
3. 魚種や部位による毒力の差
前の記事でも触れましたが、この毒の量は魚種や部位で大きく異なります。
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猛毒(肝臓・卵巣): ほんの一口食べただけで致死量を超える濃度が含まれていることが多いです。
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無毒(養殖の一部など): 毒を持たないエサで育てた養殖フグは毒を持ちませんが、天然物はエサ(貝やヒトデ)から毒を蓄積するため、個体差が激しいのが特徴です。
「今日は運良く当たらなかった」は、ロシアンルーレットと同じです。
4. 上には上がいる!フグより強い毒を持つ魚「ソウシハギ」
「フグ毒が最強」と思われがちですが、実は魚類の世界には、フグ毒を遥かに凌駕する
「パリトキシン」という毒を持つ魚がいます。
その名は「ソウシハギ」
カワハギの仲間ですが、体に青い波模様があり、見るからに毒々しい魚です(南紀や全国の沿岸で釣れます)。
また、イシガキダイやアオブダイもこの毒を持つことがあります。
毒の強さ比較
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フグ毒(テトロドトキシン): 青酸カリの約1000倍
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パリトキシン: フグ毒の約60倍~70倍
なんと、パリトキシンは**「青酸カリの数万倍」**という、生物界でもトップクラスの毒性を持ちます。
誤ってソウシハギの内臓を食べると、激しい筋肉痛や呼吸困難を引き起こし、死に至るケースがあります。 (※加熱しても毒は消えません)
まとめ
フグの毒は、人間が作った化学薬品よりも遥かに強力な、自然界の「殺し屋」です。
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強さは青酸カリの約1000倍。
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神経の伝達をブロックし、呼吸を止める。
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さらに強い「パリトキシン」を持つ魚(ソウシハギ等)もいる。
釣り場で見たことのない派手な魚や、フグの仲間が釣れた時は、「触らぬ神に祟りなし」。
素人判断での調理は絶対に避け、正しい知識で身を守りましょう。

