「干潮だから先端まで行けるぞ!」
その判断が、数時間後に命取りになることがあります。
魚影が濃く、ロケーションも最高な和歌山県・南紀の地磯。 しかし、このエリアには釣り人を危険に陥れる、ある大きな特徴があります。
それは**「潮の干満差(かんまんさ)」の大きさ**です。
今回は、南紀で釣りをするなら絶対に知っておかなければならない「海の高さの変化」について、警鐘を鳴らしたいと思います。
楽しい釣行を悲しい事故で終わらせないために、必ず目を通してください。
南紀の潮位差は「約2メートル」もある
結論から言います。 大潮の時、南紀エリアの干潮と満潮の水位差は、最大で約180cm〜200cmにもなります。
約2メートルです。
これは、日本人の平均身長を優に超える高さです。
想像してみてください。
今あなたが立っているその足元から、自分の頭の上まで海水面が上昇してくる様子を。
干潮時には海底が露出して歩けた場所も、満潮時には完全に「深い海の中」に変わります。
これが南紀の海で毎日起きている現実です。
なぜ「南紀の地磯」は特に危険なのか?
「潮が満ちるのは当たり前じゃないか」と思われるかもしれません。
しかし、南紀特有の地形がその危険度を跳ね上げています。
1. 磯の標高が極めて低い
南紀には、海面からわずか1〜2メートルほどの高さしかない、平らな地磯(通称:ハナレや洗濯板状の磯)が数多く存在します。
これは足場が良く釣りやすい反面、満潮時には逃げ場がなくなることを意味します。
潮位差が2メートルあれば、磯自体が完全に水没してしまうポイントも珍しくありません。
2. 帰路が「水没」する恐怖
先端の釣り座は高くても、そこへ至るルートが低い場所を通っていることがよくあります。
「行きは靴を濡らさずに歩けた」のに、帰り道が深さ1メートル以上の海になっている。
これが典型的な「孤立(取り残され)」のパターンです。
3. 波は計算に入っていない
潮位表の数値は、あくまで静かな状態での水位です。
ここに風による波やウネリが加わります。
満潮で水位が上がり、さらに波が這い上がってくる状況では、安全だと思っていた高台ですら波に洗われることになります。
命を守るための「3つの鉄則」
南紀の低い地磯と付き合うために、以下の3つを必ず守ってください。
① 「タイドグラフ」は命の綱
出発前に天気予報を見るのと同じように、必ず「潮見表(タイドグラフ)」を確認してください。
「何時に満潮になるのか」「今日の潮位差は何センチか」。
これを把握せずに磯に立つのは、目隠しをして道路を歩くのと同じくらい危険です。
② 満潮の2時間前には撤収する
潮が満ち切るのを待ってはいけません。
もっとも水位が高くなる時間の2時間前、あるいは潮が足元に迫る前に納竿し、高い場所へ移動してください。
「あと一投」という欲が、逃げ遅れの原因になります。
③ ライフジャケットは絶対着用
どれだけ注意していても、自然相手に「絶対」はありません。
万が一、波にさらわれたり海に落ちたりした際、浮力がなければ助かる確率は限りなくゼロに近くなります。
膨張式ではなく、岩場でも破れにくい「固型式(ベストタイプ)」のライフジャケットを強く推奨します。
まとめ
南紀の地磯における「潮位差2メートル」は、知識として知っているだけでは不十分です。
常に「今、潮は上げているのか、下げているのか」を意識し、早め早めの行動を心がけてください。
魚は逃げてもまた釣れますが、命は一つしかありません。
南紀の素晴らしいフィールドを長く楽しむために、安全に対する意識をアップデートしましょう。

