イカが「こりこり」から「ねっとり」に変化する理由

イカは同じ個体でも、
・釣りたての刺身はこりこり
・時間を置くとねっとり
という大きな食感変化が起きます。
これはイカの身の構造と、死後に起きる生化学変化が深く関係しています。
釣り人・料理人視点で徹底解説します。


結論

イカの食感が変わる最大の理由は
死後硬直 → 酵素分解 → 旨味成分の生成 → たんぱく質の緩み
という一連の変化が起きるからです。
釣りたては「筋肉が収縮して硬い」。
時間が経つと「酵素でほぐれて粘りと甘味が増す」。
これがこりこり→ねっとりの正体です。


① イカの身は「ほぼ筋肉」だから硬くなりやすい

イカの身は
・筋繊維が細く
・密度が高く
・水分が多い
という特徴があります。
釣りたては筋肉がまだ生きており、緊張した状態です。
これによりコリっとした歯ごたえが生まれます。


② 死後硬直(Rigor mortis)が始まる

イカが締まると筋肉内のATP(エネルギー源)が消費され、
筋肉がギュッと縮んで硬くなります。
魚より早く始まり、早く終わるのも特徴。
この死後硬直ピークのタイミングが最もコリコリです。


③ 自己消化(酵素分解)が進むと「粘り」が出る

硬直が解け始めると、
イカ自身が持つ酵素(プロテアーゼ)がタンパク質をゆっくり分解します。
すると
・筋肉がほぐれる
・表面が“ねっとり”してくる
・甘味(アミノ酸)が増える
という変化が起こります。
これがねっとり食感の正体です。

釣りたてと1時間後では、まったく別物になるほど変化します。


④ うま味成分「アミノ酸」が増える

酵素分解によって
・グリシン
・アラニン
・グルタミン酸
などのアミノ酸が増えます。
イカのねっとりした旨味は、この“熟成”の賜物です。
「甘く感じる」のもこのためです。


⑤ 水分が筋肉に再び行き渡る

硬直期は筋繊維が締まり、水分が外に押し出されています。
酵素により筋繊維が緩むと、水分が中に戻り
しっとり → ねっとり
した舌触りに変わります。


⑥ 温度管理でも食感が変わる

温度によって酵素の働きが変わります。
・冷やしすぎる → 分解が遅くコリコリが長い
・冷やさない → すぐにねっとりするが傷みも早い
最適は
海水氷(0〜−2℃)での冷却
がベスト。

真水氷は浸透圧で細胞が壊れるため
ねっとりではなく「ぶよぶよ」になり劣化します。
釣太郎で海水氷が推奨される理由でもあります。


⑦ 個体差や部位でも変わる

・大きいアオリイカほどねっとりしやすい
・新子(秋イカ)は常にコリコリ寄り
・エンペラは硬く、胴は柔らかい
・ゲソは繊維が太いのでコリコリが長い

など、部位によって変化のスピードも違います。


まとめ

イカが「こりこり」から「ねっとり」に変化するのは

  1. 死後硬直で筋肉が締まる

  2. 酵素がタンパク質を分解する

  3. うま味アミノ酸が増える

  4. 筋繊維が緩み、水分が戻る
    という自然な“熟成”によるものです。

釣りたてのコリコリも最高。
数時間置いたねっとり甘い刺身もまた別次元。

アオリイカは時間で味が変わる、非常に面白い食材なのです。

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