釣太郎みなべ店で飼育・展示中のアオリイカを観察していると、多くのお客様が「あ!」と
指をさす、特徴的なポーズがあります。
それが、上の画像のように、10本の足(触手)を先端にむかって「シュッ」と凝縮させるように、
きれいにまとめている姿です。
「リラックスしてるの?」 「何かを狙ってる?」 「ただ寝てるだけ?」
この非常にユニークで、どこか愛らしくもあるポーズ。
実は、アオリイカの生態が詰まった、非常に合理的で重要な意味が隠されています。
この記事では、アオリイカがなぜ触手をまとめるのか、その秘密に迫ります。
まず前提:イカの「足」は2種類ある
このポーズを理解するために、まずイカの足の構造を知っておきましょう。
イカの足は合計10本ですが、厳密には2種類に分けられます。
- 腕(わん):8本
- 比較的短く、主に移動時のバランス取りや、捕まえた獲物を口に運ぶために使います。
- 触腕(しょくわん):2本
- 非常に長く、先端に獲物を捕まえるための吸盤(カギ)が集中しています。
- 普段は体内に収納されているか、8本の腕の間に短く縮めて隠されています。
- エサを見つけた時だけ、電光石火の速さで伸ばして獲物を捕らえます。
この画像でまとめているのは、主に8本の「腕」であり、その中に「触腕」を隠し持っている状態です。
ポーズの意味1:【最重要】水の抵抗を減らす「基本姿勢」
アオリイカが触手をまとめる最大の理由は、**「遊泳時の水の抵抗を最小限に抑えるため」**です。
アオリイカは、あの優雅な泳ぎを実現するために、胴体のフチにあるヒレ(エンペラ)を巧みに波打たせて水中を移動します。
この時、10本の足がバラバラに広がっていたらどうでしょう? 当然、水の抵抗(ブレーキ)になってしまい、効率よく泳ぐことができません。
そこで、アオリイカは使わない足を進行方向(通常は頭が下、エンペラが上のため、下方向)にきれいに束ねることで、体全体を「流線型」にします。
- ホバリング(水中停止)時
- エンペラでゆっくり前進・後進する時
このポーズは、彼らにとって最もエネルギー効率が良く、最も自然な**「デフォルト・ポジション(基本姿勢)」**なのです。
この姿勢こそが、彼らが「イカの王様」と呼ばれる所以である、優雅な泳ぎを可能にしている秘密です。
ポーズの意味2:いつでも動ける「ニュートラル」な状態
「基本姿勢」ということは、リラックスしている状態とも言えます。
しかし、野生動物である彼らは、ただリラックスしているだけではありません。
この「シュッ」とまとめた姿勢は、**「いつでも動ける準備ができている」**ニュートラルな状態でもあります。
- すぐに逃げられる: 敵に襲われた際、すぐに体を反転させ、ロート(漏斗)から水を噴射して逃げることができます(ジェット噴射)。抵抗が少ないこのポーズは、スタートダッシュに最適です。
- すぐに捕食できる: 腕の中に隠している2本の「触腕」を、獲物を見つけた瞬間に発射する準備ができています。
つまり、「リラックス」と「緊張(警戒)」のちょうど中間にあたる、最も合理的な待機姿勢がこれなのです。
水槽の中で人間(=彼らにとっては大型生物)に見られている時も、このポーズを多用するのは、周囲を警戒しつつ観察しているからとも言えます。
ポーズの意味3:武器(触腕)を「隠している」
前述の通り、アオリイカ最大の武器は、2本の長い「触腕」です。
しかし、彼らはこの武器を常に見せびらかすことはしません。 普段は8本の腕の間に巧妙に隠し持っています。
この「まとめたポーズ」は、**「今は武器を使う時ではないが、いつでも使えるぞ」**という状態を示しています。
もしこのポーズから、一瞬だけ2本の長い触腕が飛び出して獲物を捕らえたなら、そのスピードに驚くはずです。
まとめ:あのポーズは「優雅さ」と「機能美」の結晶
アオリイカが触手をきれいにまとめるポーズには、以下のような意味がありました。
- 水の抵抗を最小にする、最も効率的な「基本姿勢(流線型)」
- リラックスしつつ、すぐに逃げる・捕食できる「ニュートラル(待機)状態」
- 最大の武器である「触腕」を隠し持っているサイン
一見、可愛らしく見えるあのポーズですが、そこにはアオリイカが海で生き抜くための「優雅さ」と「機能美」が凝縮されています。
ぜひ釣太郎みなべ店で、アオリイカがどのようにこのポーズを使い分け、優雅に水中を舞っているのか、その目で直接確かめてみてください。


