「この間釣れたポイントなのに、今日は全然釣れないな…」あるいは、
「あの魚、前に釣った魚と同じ種類のはずなのに、どうも警戒心が強い気がする…」。
実は、それ、気のせいではないかもしれません。
魚は私たちが想像する以上に賢く、一度釣られた経験のある魚は、釣り針や仕掛けを記憶し、次回以降は警戒するようになることが科学的に証明されています。
この現象を「Beukema(ボイケマ)の学習説」と呼びます。
特にリリースされた魚に顕著に見られるこの学習能力について、今回は詳しく掘り下げていきたいと思います。
Beukemaの学習説とは?
Beukemaの学習説は、オランダの動物行動学者であるJ. J. Beukema氏が提唱した理論です。
彼は、実験を通じて魚が一度捕獲された経験を記憶し、その後の行動に変化が見られることを明らかにしました。
具体的には、
釣り針やルアー、仕掛けの形状や動きを記憶する
捕獲された場所や状況を記憶する
捕獲時の不快な経験(痛みやストレス)を記憶する
といった形で学習が進むと考えられています。
この学習の結果、一度釣られた経験のある魚は、同じ種類の仕掛けや状況に対して強い警戒心を持つようになります。
例えば、以前にワームで釣られた魚は、次にワームが近づいてきても簡単には食いつかなくなる、といった行動が観察されます。
なぜリリースされた魚に学習が顕著なのか?
Beukemaの学習説が特にリリースされた魚に顕著に見られるのには理由があります。
生存経験がある: リリースされた魚は、一度捕獲されながらも生き残った経験を持っています。この「生還」の経験が、今後の生存戦略において非常に重要な学習機会となります。
記憶の定着: 捕獲時の強いストレスや痛みは、魚にとって非常に印象的な出来事です。この強烈な体験が、関連する情報(仕掛け、場所など)と結びつき、記憶として定着しやすいと考えられています。
再遭遇の可能性: リリースされた魚は、再び同じ釣り場に生息するため、同じ釣り人や仕掛けに遭遇する可能性が高まります。この再遭遇の機会が、学習効果をさらに高めることになります。
魚の学習能力を示す具体的な行動例
では、具体的に魚はどのように学習の成果を示すのでしょうか?
仕掛けへの警戒: 以前釣られた仕掛けと似たものが近づくと、急に方向を変えたり、深場に潜ったりして避けるようになります。
特定のルアーへの無反応: 特定の色のルアーや、特定の動きをするルアーに対して、明らかに反応が鈍くなることがあります。
食い渋り: 同じ場所で連続して釣りをしていると、次第に魚の食いが悪くなることがあります。これは、一部の魚が学習し、警戒心を高めている可能性があります。
賢い逃走: 針にかかっても、以前よりも巧妙に抵抗し、フックアウトしようとする行動が見られることもあります。
私たちの釣りへの影響と対策
魚の学習能力を知ることは、私たち釣り人にとっても非常に重要です。
同じ仕掛けばかり使わない: 一度釣られた魚が学習することを考慮し、同じポイントで同じ仕掛けばかりを使うのは避けた方が良いでしょう。ルアーの色や種類、アクション、あるいはエサの種類を変えるなど、バリエーションを持たせるのが効果的です。
アプローチを変える: キャストの方向や角度、リトリーブのスピードなどを変えることで、魚に違和感を与えずにアプローチできるかもしれません。
リリース時の配慮: 魚をリリースする際は、できるだけ魚にストレスを与えないように素早く丁寧に行いましょう。ダメージを最小限に抑えることで、魚のその後の生存率を高めるだけでなく、学習能力にも良い影響を与える可能性があります。
情報共有の重要性: 釣りの仲間と情報共有を行うことで、どのルアーでどの魚が釣れたか、どの仕掛けに警戒しているかなどの情報を得ることも、釣果アップに繋がるかもしれません。
まとめ:魚は賢い!だからこそ面白い!
「魚は“学ぶ”生き物です。」
この一文に込められた意味は、非常に奥深いものがあります。
一度釣られた経験のある魚が警戒心を高めるというBeukemaの学習説は、魚の持つ驚くべき知的な一面を示しています。
この知識を持つことで、私たちの釣りはより戦略的で奥深いものになります。
魚の心理を読み、その学習能力を逆手に取ることで、これまで以上に釣りの醍醐味を味わえるはずです。
魚の賢さを理解し、リスペクトの気持ちを持って釣りに臨むことで、きっと新たな発見と感動が待っていることでしょう。
さあ、今日も賢い魚たちとの駆け引きを楽しみに、釣りに出かけましょう!


