ヒラスズキ釣り、「海が荒れたら釣れる」は大間違い?

活性が上がる「本当の条件」と「釣れない荒れ方」

ヒラスズキ釣りにおいて、最も有名な定説があります。 「海が荒れれば荒れるほど釣れる」。

「サラシ(白泡)が広がれば、どこからともなくヒラスズキが現れる」。

多くの釣り人がこれを信じて、暴風の磯へと向かいます。

しかし、現実はそう単純ではありません。

「こんなに良いサラシが出ているのに、なぜ食わないんだ?」と首をかしげた経験はないでしょうか。

実は、「荒れているから活性が上がる」というのは、大きな誤解を含んでいます。

今回は、ヒラスズキの生態から紐解く「釣れる荒れ方」と「釣れない荒れ方」の決定的な違いについて解説します。

1. 「荒れれば良い」が間違いである理由

ヒラスズキは遊泳力の高い魚ですが、無敵ではありません。

彼らも生き物であり、無駄な体力消費を嫌います。

海が洗濯機のように荒れ狂っている状況を想像してください。

潮流が複雑に絡み合い、岩に波が激しく叩きつけられる状況下では、ヒラスズキ自身もステイ(定位)することに必死になります。

エサを追うどころか、身の安全を確保するために岩の亀裂や深場に避難してしまうのです。

つまり、荒れすぎは「捕食モード」ではなく「避難モード」のスイッチを入れてしまいます。

これを「活性が上がっている」と勘違いしてルアーを投げ続けても、反応が得られないのは当然です。

2. 活性を下げる「ニゴリ」と「砂」

荒れ模様の海で最も警戒すべきなのが「底荒れ」です。

波のパワーが強すぎると、海底の砂や泥を巻き上げます。

ヒラスズキは、エラに砂が入ることを極端に嫌うと言われています。

また、視界が極端に悪くなる「カフェオレ色」の濁りが入ると、ルアーを見つけることが困難になります。

サラシは「白」であるべきで、「茶色」であってはいけません。

いくら広大なサラシが広がっていても、水色が悪いエリアでは、ヒラスズキの活性は著しく低下します。

「荒れている」ことよりも、「水質がクリアであるか」の方が、食い気には重要です。

3. 本当に活性が上がる条件とは?

では、ヒラスズキが狂ったようにエサを追うのはどのような状況でしょうか。

それは、「適度なサラシ」と「ベイト(小魚)の制御不能状態」が重なった瞬間です。

① ベイトが姿勢を崩す程度の流速

小魚が波に揉まれ、泳ぎのバランスを崩す瞬間。

ヒラスズキはこのタイミングを虎視眈々と狙っています。

海全体が荒れている必要はなく、捕食スポットである「岩陰」や「スリット」の周辺にだけ、ヨレやサラシがあれば十分です。

② 酸素量の増加

サラシには、海水中に酸素を溶け込ませる効果があります。

適度な波気は溶存酸素量を増やし、魚の活性を高めます。

しかし、これも「混ぜすぎ」は禁物です。

③ プレッシャーの解除

サラシの本来の役割は、ヒラスズキの姿をベイトや外敵(鳥や人間)から隠す「ブラインド効果」です。

「荒れているから元気になる」のではなく、「姿が隠せるから、安心して大胆に動けるようになる」というのが正解です。

安心してエサを待てる環境(=質の良いサラシ)があって初めて、彼らは捕食行動に移ります。

4. 狙うべきは「洗濯機」の中ではない

荒れた海で釣果を上げる熟練者は、決して激流のど真ん中には投げません。

彼らが狙うのは、荒れた海の中に一瞬だけできる「安定したスポット」です。

サラシが広がりつつも、引き波と寄せ波がぶつかって水が止まる場所。

あるいは、サラシの切れ目にある、少し水深が落ちた静かな場所。

ヒラスズキは、その「静」と「動」の境目で待ち構えています。

「荒れている場所」を釣るのではなく、「荒れを利用してエサを食いやすい場所」を見つけることが、釣果への近道です。

結論:荒れれば釣れる思考からの脱却

「今日は荒れているから爆釣だ」と安易に考えるのは危険です。

むしろ、荒れている日ほど、ポイント選定はシビアになります。

「魚が避難していないか?」 「砂が舞っていないか?」

「ベイトが泳げないほど荒れていないか?」

これらを冷静に分析する必要があります。

そして何より、荒れた海は危険と隣り合わせです。

ヒラスズキ釣りにおいて、最高の釣果よりも優先すべきは「安全に帰ること」です。

「荒れすぎ」は魚にとっても人間にとっても、良いことは何一つありません。

自然の状況を正しく読み、適切なタイミングで竿を出す。

それこそが、幻の魚に出会うための最短ルートです。

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