「大きい魚ほど脂が乗っていて美味しい」というのは、半分正解で半分間違いです。
確かに大型魚は脂の総量が多いですが、同時に「ハズレ個体」を引くリスクも跳ね上がります。
なぜ同じ種類の魚なのに、天と地ほどの味の差が生まれるのでしょうか。
そこには、魚たちが生きてきた「年数」と「環境」が深く関わっていました。
最大の理由は「生きた年数(履歴書)」の違い
中型魚(アジやイサキなど)と大型魚(マグロ、クエ、カンパチなど)の決定的な違いは、寿命の長さです。
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中型魚(寿命3〜5年): 食べているエサや生息環境に大きな差が出にくいです。 いわば「育ちが似ている」ため、味のクオリティが安定しています。
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大型魚(寿命10〜30年以上): 長く生きる分、個体ごとの「履歴書」が全く異なります。 「何を食べてきたか」「どの海流で育ったか」「産卵を何回経験したか」によって、身質が別物になります。
人間で例えるなら、20歳(若魚)の体力差よりも、50歳(老成魚)の健康状態の差の方が大きいのと同じです。
長く生きるほど、個体差(=当たり外れ)は拡大するのです。
巨大ゆえの「処理の難しさ」
大型魚の味がブレるもう一つの理由は、釣り上げた後の処理(〆方)の難易度です。
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体温上昇による「身焼け」: マグロのような大型回遊魚は、釣り上げられる際に激しく暴れ、体温が急上昇します。 巨体ゆえに熱が抜けにくく、自身の熱で身が白く煮えてしまう「身焼け」が起きやすいのです。 これは見た目が悪くなるだけでなく、味も酸っぱくなります。
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血抜きのムラ: 体が大きいほど、体の隅々まで血を抜くのに高度な技術を要します。 血が残れば臭みの原因となり、熟成もうまくいきません。
つまり、大型魚は「育ち」と「死に際」の両方にリスクを抱えているのです。
クエに見られる「場所」による格差
岩礁帯に住むクエ(ハタ類)の場合、回遊しないため「住んでいた場所」が味を決定づけます。
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当たり: エサが豊富な良い岩場を独占していた個体。 極上の脂を蓄えています。
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外れ: エサが少ない場所で痩せていた個体、または老成しすぎて身が硬くなった「主(ぬし)クラス」。
クエは大きければ大きいほど良いとされますが、あまりに巨大な老成魚は、身が繊維質で硬く、
独特の磯臭さが強くなるケースもあります。
見出し4:クジラも「当たり外れ」はあるのか?
魚類ではなく哺乳類のクジラですが、結論から言うと**「魚以上に当たり外れが激しい」**と言えます。
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理由1:年齢差が極大 クジラは数十年生きます。 若い個体は柔らかく臭みも少ないですが、高齢の個体は肉の色が濃く、クセが強くなる傾向があります。
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理由2:部位の多さ 巨体ゆえに、背中、腹、尾の付け根など、部位によって脂の乗りも筋の入り方も全く違います。 「クジラは硬い」と思っている人は、たまたま筋の多い部位や、解凍に失敗したものを食べた可能性があります。
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理由3:冷凍技術 クジラは捕獲後すぐに船上で冷凍されますが、家庭での解凍方法を間違えるとドリップが出て台無しになります。 素材の差に加え、食べる側の技術も問われる食材です。
まとめ:大型魚選びは「目利き」を信じるのが一番
大型魚の「当たり外れ」が激しい理由は以下の3点です。
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長く生きるため、育ちや個体差が大きい。
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体が大きく、血抜きや冷却が難しい。
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産卵などの影響を強く受ける。
スーパーや魚屋で大型魚(切り身)を買う際は、単に「デカイから旨そう」ではなく、
信頼できる店員の「今日のは良いよ」という言葉を信じるのが、ハズレを引かない一番の近道です。
逆に言えば、「当たりの大型魚」は、他の何にも代えがたい感動的な旨さを持っています。
ぜひそのギャンブルを楽しんでみてください。


