日本全国で楽しまれている釣り。
同じアジ。
同じブリ。
同じクロダイ。
同じタチウオを狙っているのだから、釣り方も全国ほとんど同じだと思っていませんか?
実はかなり違います。
特に関西と関東では、
仕掛けの形。
魚の呼び方。
人気の釣法。
船釣りのスタイル。
まで違うことがあります。
関西の釣具店では当たり前の商品が、関東ではあまり見かけない。
反対に関東では定番なのに、関西では馴染みが薄い。
日本の釣りは、想像以上に「地域文化」の影響を受けているのです。
一番分かりやすい違いはサビキ釣り
初心者にもおなじみのサビキ釣り。
ところが仕掛けを見ると、関西と関東では昔から大きな違いがあります。
一般的には、
関西=下カゴ式
関東=上カゴ式
が主流とされてきました。
関西式では、サビキ仕掛けの一番下にアミエビを入れるカゴを取り付けます。
一方、関東式では仕掛けの上側にカゴを付けます。
釣具メーカーのハヤブサも、東京湾・相模湾を中心とする関東では上カゴ、
大阪湾・播磨灘を中心とする関西では下カゴが長く定番だったと紹介しています。
同じアジをサビキで狙うだけなのに、
仕掛けを上下ひっくり返したような違いがある。
これはかなり面白い地域差です。
なぜ関西と関東でカゴの位置が違った?
ここには諸説あります。
釣り場の水深。
潮の流れ。
手返し。
マキエをどのように魚へ届けるか。
こうした地域ごとの釣り場環境や考え方によって仕掛けが進化したと考えられています。
ただし「なぜ関東は上、関西は下になったのか」という由来については説明が複数あり、決定的な一次資料があるわけではありません。
現在では全国でどちらの仕掛けも購入できるため、
「関西だから絶対下カゴ」
ではなく、狙うタナや水深によって使い分ける釣り人も増えています。
それでも、
地域によって仕掛けそのものが違った
という事実は、日本の釣り文化を象徴しています。
ブリの名前も全然違う
さらに面白いのが魚の名前です。
代表例がブリ。
ブリは成長するにつれて名前が変わる「出世魚」です。
ところが、この名前が関西と関東で違います。
関西
ツバス
↓
ハマチ
↓
メジロ
↓
ブリ
関東
ワカシ
↓
イナダ
↓
ワラサ
↓
ブリ
同じ魚なのに、
関西の釣り人が「メジロ釣れた!」
と言っても、関東の釣り人には一瞬サイズ感が伝わらないことがあります。
市場魚貝類図鑑でも、関西ではツバス、ハマチ、メジロ、ブリという呼称が記録されています。
釣果情報を見るときは、魚の名前だけでなく地域まで確認した方がいいのです。
クロダイか、チヌか
これも釣り人なら馴染み深い違いです。
標準和名は「クロダイ」。
しかし関西では、
チヌ
という名前が非常に一般的です。
釣具売り場でも、
チヌ竿。
チヌ針。
チヌ用集魚剤。
という商品名が普通に並びます。
さらにクロダイの釣り方にも地域文化があります。
関西には「紀州釣り」がある
和歌山県が発祥とされるクロダイ釣法が、
紀州釣り
です。
米ぬかなどを使ったダンゴで刺しエサを包み、そのまま海底へ届けます。
エサ取りをかわしながら、海底のチヌにエサを届ける非常に合理的な釣法です。
紀州釣りは現在全国で楽しまれていますが、もともとは和歌山発祥のご当地釣法です。
つまり、
その地域の海に合わせて生まれた釣り方が全国へ広がった
わけです。
一方、関東には東京湾発祥の「ヘチ釣り」
関東にも代表的なご当地釣法があります。
東京湾で発祥したとされる、
クロダイのヘチ釣り
です。
岸壁ギリギリにカニや貝などのエサを落とし、壁際についているクロダイを狙います。
非常にシンプルですが、繊細なアタリを取る奥深い釣りです。
現在でも東京湾では人気があります。
つり人社によると、堤防際を狙うヘチ釣りは東京湾が発祥とされています。
つまりクロダイ一匹を見ても、
和歌山では紀州釣り。
東京湾ではヘチ釣り。
という全く違う文化が発達したのです。
タチウオも関西色がかなり強い
タチウオ釣りも面白い例です。
大阪湾では昔からタチウオ人気が非常に高く、
波止からの電気ウキ釣り。
引き釣り。
テンヤ。
船のテンヤ釣り。
など多くのスタイルが発達しました。
大阪湾ではテンヤタチウオが代表的な人気釣法となっています。
一方、関東や中部の船タチウオでは以前からテンビンを使った仕掛けが主流でした。
近年は関西で人気だったテンヤ釣りが関東や中部にも広がっています。
つまり釣り方も、
関西から関東へ輸出される
ことがあるのです。
関東は船釣り文化が非常に強い
もちろん関西でも船釣りは盛んです。
ただ東京湾には、
アジ。
タチウオ。
カワハギ。
シロギス。
マダイ。
クロダイ。
などを狙う遊漁船文化が古くからあります。
例えば東京湾のアジ釣りでは、コマセを使った「LTアジ」が代表的な釣り方として定着しています。
最近ではそこへバチコンアジングなど新しい釣法も加わっています。
マダイ釣りについても、関東周辺ではシャクリダイやコマセダイなど、
地域独自の仕掛けが長い時間をかけて発達してきました。
同じ海釣りでも「文化」が違う
ここまでを見ると、あることが分かります。
魚が違うから釣り方が違うだけではありません。
同じ魚を狙っていても、
地域ごとに釣り方が変わっています。
なぜでしょうか。
大きな理由は、
海の環境が違うからです。
東京湾。
相模湾。
大阪湾。
紀伊水道。
瀬戸内海。
南紀。
同じ太平洋側でも、
水深。
潮流。
地形。
港の形。
魚影。
エサとなる生物。
すべて違います。
その土地で最も魚を釣りやすい方法を何十年、何百年と釣り人が試した結果、
地域独自の釣り文化が生まれた
と考えると分かりやすいでしょう。
釣具店の商品まで変わる
地域差は釣り方だけではありません。
釣具店の商品構成にも表れます。
大阪や和歌山などで釣具店を見ると、
チヌ。
グレ。
紀州釣り。
タチウオ。
波止釣り。
などの商品が非常に充実している店があります。
一方、東京湾周辺では、
LTアジ。
カワハギ。
テンビンタチウオ。
コマセマダイ。
ヘチ釣り。
など地域の船宿や釣り場に合わせた商品が充実します。
そのため、
旅行先の釣具店を見るだけでも、その地域で何の釣りが人気なのか分かる
ことがあります。
これは釣具店巡りの面白さでもあります。
今は「関西式」「関東式」の境界が薄くなっている
ただし最近は状況が変わっています。
YouTube。
SNS。
釣りブログ。
全国チェーンの釣具店。
オンラインショップ。
こうした情報流通によって、地域限定だった釣法が全国へ急速に広がるようになりました。
関西で人気だったタチウオテンヤが関東でも使われる。
関東のヘチ釣りを関西の釣り人が楽しむ。
関西式の下カゴサビキを関東で使う。
こうしたことは普通になっています。
つまり現在は、
「関西VS関東」から「良い釣り方は全国へ広がる時代」
に変わりつつあります。
それでも地域差は釣りの面白さ
関西と関東。
距離にすれば数百km程度ですが、釣り文化を見るとかなり違います。
サビキだけでも、
関西は下カゴ。
関東は上カゴ。
ブリなら、
関西はツバス、ハマチ、メジロ。
関東はワカシ、イナダ、ワラサ。
クロダイなら、
関西ではチヌという呼び方が浸透し、和歌山では紀州釣りが生まれました。
関東では東京湾からヘチ釣りが発達しました。
同じ日本。
同じ魚。
同じ海釣り。
それでも、
釣り方はこれほど違います。
釣りは魚を釣るだけの遊びではありません。
その土地の海、魚、歴史、そして釣り人の工夫が積み重なった「文化」でもあるのです。
他の地域へ釣りに行ったときは、
「いつもの釣り方」をそのまま持ち込むのではなく、
地元の釣り人がどんな仕掛けを使っているのか
を見てみると、新しい発見があるかもしれません。
関西VS関東 代表的な違い一覧
| 比較 | 関西 | 関東 |
|---|---|---|
| サビキ | 下カゴ式が伝統的 | 上カゴ式が伝統的 |
| ブリ幼魚 | ツバス・ハマチ | ワカシ・イナダ |
| ブリ中型 | メジロ | ワラサ |
| クロダイ | チヌの呼称が一般的 | クロダイの呼称が一般的 |
| クロダイ釣法 | 紀州釣りなど | ヘチ釣りなど |
| タチウオ | テンヤ文化が強い | テンビン文化が強かった |
| 釣り文化 | 波止釣りの地域色が濃い | 東京湾の船釣り文化が強い |
※あくまで代表的な傾向であり、現在は釣法の全国化が進んでいるため
明確に分けられない地域もあります。


