釣ったばかりの魚を海水氷で完璧に締めても、長期保存の温度設定を間違えれば「冷凍焼け」の魔の手は忍び寄ります。
では、科学的に見て冷凍焼けを完全に防ぐための最適温度は何度なのでしょうか。
結論から言うと、細胞レベルで劣化を止める理想の温度は「マイナス60℃」の超低温です。
一般的な家庭用冷凍庫の温度はマイナス18℃前後に設定されています。
このマイナス18℃という環境では、魚の水分が凍結していても、氷が直接気体になる「昇華」という現象を完全に止めることはできません。
庫内は霜取り機能などによってわずかに温度変化を繰り返しており、これが昇華を加速させ、スポンジ状のパサパサな身を作り出してしまうのです。
しかし、マイナス60℃の世界では、魚の細胞内の水分が「ガラス転移」と呼ばれる状態になります。
分子の動きが極限まで停止するため、水分の昇華も脂質の酸化もピタリと止まり、数ヶ月経っても釣りたての鮮度と旨味を維持できるのです。
マグロなどの高級魚がこの超低温ストッカーで保存されるのには、こうした明確な科学的根拠があります。
とはいえ、一般家庭にマイナス60℃の冷凍庫を置くのは現実的ではありません。
家庭用のマイナス18℃環境で美味しく保存するには、やはり空気に触れさせない真空パックや、温度変化の少ない庫内の奥の方で保管する物理的な工夫が必須になります。
せっかく海水氷で細胞の隅々まで旨味を保った極上の魚ですから、保存の限界を知り、一番美味しいタイミングを逃さずに味わい尽くしたいですね。


