チヌやボラは平気なのに、なぜアオリイカだけ「真水」に弱いのか?その決定的な理由

大雨が降った後や、河口付近。

チヌ(クロダイ)やボラ、ヒラスズキなんかは、むしろ元気いっぱいに泳ぎ回っています。

彼らは汽水域(海水と淡水が混じる場所)が大好きですし、時には真水に近い場所まで遡上することさえあります。

しかし、アオリイカはどうでしょう。

ちょっと雨が降って海が「水潮(みずしお)」になっただけで、嘘みたいに姿を消してしまいます。

同じ海に住んでいるのに、なぜこれほど塩分濃度の変化に対する強さが違うのか。

それは、根性がないからではなく、「体の構造」と「進化の過程」が根本的に違うからです。

今回は、釣り場選びにも直結する、この「決定的な差」についてお話しします。

1. 「防水スーツ」を着ている魚、裸のアオリイカ

まず一番の違いは、体の表面です。

チヌやボラなどの魚には、硬い「ウロコ」があり、さらにその上をヌルヌルとした「粘液」が覆っています。

これが高性能な「防水スーツ」の役割を果たしています。

このバリアのおかげで、周りが真水だらけになっても、体の中に水が勝手に入ってくるのを物理的にブロックできるのです。

対して、アオリイカを見てください。

彼らにはウロコがありません。 皮膚がむき出しの状態です。

しかも、その皮膚は「半透膜(はんとうまく)」といって、水分を通しやすい性質を持っています。

つまり、周りの塩分濃度が下がると、防御壁なしでダイレクトにその影響を受けてしまうのです。

真水の中にいるアオリイカは、裸で寒空の下に立たされているようなものです。

2. 腎臓のスペックが違う

見た目だけでなく、体の中の機能も違います。

魚類、特に汽水域に入れるチヌたちは、「浸透圧調節」という機能がズバ抜けて優秀です。

もし体の中に真水が入ってきても、腎臓を使って余分な水分をせっせと尿として排出したり、

エラを使って塩分を取り込んだりして、体内のバランスを一定に保つことができます。

しかし、アオリイカなどの頭足類は、進化の過程でずっと安定した海の中で暮らしてきました。

そのため、急激な塩分変化に対応するための、高度な腎臓機能や調節機能を発達させる必要がなかったのです。

彼らの体は、塩分濃度が高い「100%海水」の環境で生きることに特化しすぎてしまったと言えます。

だから、少しでも真水が混じると、体内のバランスが崩れて生きていけなくなるのです。

釣果を分ける「場所選び」のヒント

この理由を知っていると、雨上がりのポイント選びが変わります。

「チヌが釣れているから、生命感はあるな」と思ってアオリイカを狙っても、そこが河口近くなら望みは薄いということです。

アオリイカは、塩分濃度が下がると、より塩分が安定している「深場」や「沖」、

あるいは真水の影響を受けにくい「潮通しの良い岬」へと避難します。

「雨が降ったら、川から離れろ」。

これはアオリイカ釣りの鉄則です。

彼らは水潮を嫌って逃げているだけなので、逃げ込んだ先を見つければ、大釣りのチャンスも残っています。

自然の理屈を知って、賢くアオリイカを追いかけましょう。

タイトルとURLをコピーしました