「魚は全部同じ味」なんて思っていませんか。
牛肉にサーロインやヒレ、モモがあるように、魚にも部位によって全く異なる個性があります。
釣り上げた魚を最高に美味しく食べるには、この「部位ごとの特徴」を知って使い分けることが重要です。
今回は、魚の身体の地図を広げ、それぞれの部位が持つ旨味や脂の秘密を解説します。
1. 背身(せみ):筋肉質で上品な旨味の優等生
魚の背中側の身のことです。 ここは魚が泳ぐために最もよく使う筋肉が集まっている場所です。 そのため、運動量が多く、身が引き締まっています。
【特徴】
-
脂分:控えめでさっぱりしている。
-
食感:筋肉繊維がしっかりしており、プリッとした弾力が楽しめる。
-
味:魚本来の香りや、クリアな旨味(イノシン酸など)をダイレクトに感じられる。
【おすすめの食べ方】
刺身にするなら、まずはこの背身から食べるのが鉄則です。
わさび醤油でさっぱりと頂くのに最適です。
また、天ぷらやフライにしても形が崩れにくく、身の味が濃いので美味しく仕上がります。
2. 腹身(はらみ):脂の乗った濃厚な「トロ」ゾーン
魚のお腹側の身のことです。
ここは内臓を守るために肋骨があり、さらにエネルギー源としての「脂」を蓄える倉庫のような場所です。
【特徴】
-
脂分:非常に多い。いわゆる「大トロ」「中トロ」と呼ばれるのはこの部分。
-
食感:脂が繊維に入り込んでいるため、口当たりが柔らかく、とろけるような食感。
-
味:濃厚な甘みとコクがある。
【おすすめの食べ方】
刺身はもちろん最高ですが、脂が強すぎると感じる場合は「炙り」がおすすめです。
皮目を少し炙ることで余分な脂が溶け出し、香ばしさがプラスされます。
煮付けにする場合も、腹身を使うと脂が煮汁に溶け出し、こってりとした極上の仕上がりになります。
3. カマ(カマ下):一番脂が乗っている「釣り人の特権」
エラの後ろにある胸ビレ周辺の肉です。
魚を捌く際、頭と一緒に切り落として捨ててしまう人もいますが、それは一番美味しいところを
捨てているのと同じです。
一匹から二つしか取れない希少部位です。
【特徴】
-
脂分:腹身以上に脂が乗っていることが多い「超濃厚ゾーン」。
-
食感:複雑に入り組んだ筋肉と脂が層になっており、ジューシーで独特の弾力がある。
【おすすめの食べ方】
迷わず「塩焼き」か「煮付け」です。
特にカマ焼きは、焼くことで脂がジュワジュワと溢れ出し、身の旨味と絡み合います。
マグロやブリなどの大型魚のカマは、ステーキのように焼いても絶品です。
4. 尾の身(おのみ):筋肉の塊、最強の弾力
尻尾に近い部分の身です。
ここは泳ぐ際の推進力を生むプロペラのような役割をしているため、筋繊維が非常に発達しています。
【特徴】
-
脂分:少ない。
-
食感:筋が多く、かなり硬め。
-
味:味は濃いが、スジが気になることがある。
【おすすめの食べ方】
刺身だと筋が口に残ることがあるので、薄造りにするか、加熱調理に向いています。
唐揚げや竜田揚げにすると、熱で筋がゼラチン質に変わり、旨味の強いおかずになります。
5. エンガワ(縁側):ヒラメやカレイだけの秘密兵器
ヒレを動かすための付け根にある筋肉です。 主にヒラメやカレイなどの扁平な魚にしかありません。
【特徴】
-
脂分:運動量の多い筋肉でありながら、コラーゲンと脂が凝縮されている。
-
食感:コリコリとした独特の歯ごたえ。
【おすすめの食べ方】
刺身や寿司ネタとして人気ですが、少し炙ると脂が溶けて甘みが増します。
ポン酢でさっぱり食べるのも、脂の甘みを引き立てる良い方法です。
まとめ:部位を知れば、魚料理はもっと自由になる
魚は「切り身」という一つの物質ではありません。
背中のさっぱりした旨味、お腹の濃厚な脂、カマのジューシーさ。
一匹の魚の中に、フルコースのようなバリエーションが隠されています。
釣り人の特権は、これらを全て自分の手で切り分け、好きなように味わえることです。
次に魚を捌くときは、包丁を入れる場所による「身の違い」を指先で感じてみてください。
きっと、いつもの晩酌が数倍楽しくなるはずです。

