結論から言います。
味が悪い原因は、**「個体差が3割、処理ミスが7割」**です。
しかし、その「3割の個体差」が、時にはどうしようもないほど劇的な差を生むこともあります。
それぞれの原因を深く掘り下げてみましょう。
1. 【魚のせい】どうあがいても勝てない「ハズレ個体」
悲しいですが、海の中には「美味しくない時期の魚」や「美味しくない生活をしている魚」がいます。
これは料理の腕ではカバーしきれません。
① 産卵後の「出がらし」状態
これが一番の要因です。
魚は産卵にすべてのエネルギーを使います。
産卵直後(アフタースポーン)の魚は、身の栄養が卵や白子に持っていかれ、スカスカのスポンジ状態です。
マダイやスズキ、アオリイカなど、大型魚ほど顕著です。
痩せていて、持った時に妙に軽い魚は、リリースしてあげるのも優しさです。
② 食べている「エサ」の違い
「回遊型」と「居着き型」の違いです。
例えばアジ。
外洋を回遊し、豊富なプランクトンや小魚を食べている「金アジ」や「黄アジ」は脂ノリノリで絶品です。
一方、湾内の暗い場所に定住し、汚れや質の悪いエサを食べている「黒アジ(背黒)」は、脂が少なくパサついています。
同じアジでも、何を食べて育ったかで味は別物になります。
③ 生息環境の臭い
流れの悪いドブ川のような河口で釣れたスズキやチヌ。
これは皮目に独特の臭いが染み付いています。
これはもう、個体の問題というより環境の問題です。
きれいな海(南紀の海など!)で釣れた魚が美味しいのは、このためです。
2. 【あなたのせい】実は一番多い「処理と保存」のミス
「今日の魚はハズレだ」と嘆く前に、自分の胸に手を当ててみてください。
その魚、本当に完璧な状態で持ち帰りましたか?
① 「水」に触れさせすぎた
真水で魚をジャブジャブ洗っていませんか?
あるいは、クーラーボックスの氷が溶けて、魚が水没していませんか?
「水」は魚の旨味を奪い、ふやけさせ、臭みの原因になります。
魚が水に触れるのは、血抜きの時と、調理直前の洗浄だけ。
クーラーボックス内では、必ず袋に入れるか、スノコを敷いて水に浸からないようにしてください。
② 「冷やしすぎ」の失敗
「冷やせばいい」と思って、氷を魚の肌に直接当てていませんか?
氷が触れている部分だけが凍傷を起こし、「氷焼け」して味が落ちます。
身が白っぽくなり、そこから変色が始まります。
必ず新聞紙やタオルを間に挟むか、海水氷で全体を均一に冷やしてください。
③ 胃袋の内容物を放置した
内臓、特に胃袋にエサ(オキアミなど)が残ったまま放置すると、そこから猛烈な勢いで腐敗が進みます。
消化酵素が自身の内臓を溶かし、身に臭いが移ります。
「家に帰ってから捌こう」ではなく、できれば現場で内臓まで出してしまうのがベストです。
少なくとも、帰宅したら一秒でも早く内臓を取り出してください。
3. 【タイミングのせい】「食べる時間」を間違えている
個体も良く、処理も完璧。
それでも「まずい(硬い、味がしない)」と感じるなら、それは包丁を入れるタイミングが早すぎるのかもしれません。
釣りたての魚は、死後硬直で身が縮こまっています。
この時の食感は「コリコリ」として最高ですが、旨味成分(イノシン酸)はまだ出ていません。
「旨味がない=まずい」と感じるなら、それは熟成不足です。
特に大型のハタ系(クエなど)やマダイは、当日は味が薄いです。
3日~5日寝かせることで、化ける魚も多いのです。
まとめ:見極める目を養おう
釣った魚が美味しくない時。 まずは魚の体型を見てください。
お腹がペチャンコではないか? 色がどす黒くないか?
もし魚が太っていて綺麗なら、原因は十中八九、あなたの「持ち帰り方」にあります。
逆に言えば、処理さえ極めれば、多少コンディションの悪い魚でも美味しく食べられます。
「個体差」を見抜く目と、「処理」の腕。 この両方を磨いてこそ、真の釣り師と言えるでしょう。

