魚市場や鮮魚コーナーで、茹でてもいないのに真っ赤なカニを見かけたことはありませんか?
それが、今回ご紹介する**「アサヒガニ」です。
カニといえば「横歩き」が常識ですが、このアサヒガニはなんと「前後に歩く」という変わった特技を持っています。
一見すると「カブトガニ」や「巨大な昆虫」のようにも見えるこの不思議なカニ。
実は、知る人ぞ知る「超高級・絶品食材」**なのです。
今回は、そのユーモラスな形の秘密から、驚きの生態、そして食通を唸らせる味まで、
アサヒガニのすべてを解き明かします。
1. アサヒガニとは?名前の由来
アサヒガニ(学名:Ranina ranina)は、十脚目アサヒガニ科に分類されるカニです。
最大の特徴は、生きている状態から全身が「鮮やかな朱色」をしていること。
その姿が、東の空から昇る「朝日」のように赤いことから、「アサヒガニ」と名付けられました。
英語では「Spanner Crab(スパナガニ)」や「Red Frog Crab(赤いカエルガニ)」と呼ばれ、
そのユニークな形状が世界中で注目されています。
2. なぜこんなにユーモラスな形なのか?
アサヒガニの体は、普通のカニ(ワタリガニやズワイガニ)のような横長ではなく、縦に長い「亀の甲羅」のような形をしています。
さらに、脚は平たく潰れたような形です。
この「ヘンテコ」な形には、彼らの生き残り戦略が隠されています。
① 砂に潜るための「シャベル」
アサヒガニは、海底の砂の中に体を埋めて生活しています。
あの平たい脚は、砂を効率よく掻き分けるための「シャベル」の役割を果たしているのです。
泳ぐことや歩くことよりも、「潜ること」に特化した進化を遂げた結果です。
② カニなのに「前後に歩く」
普通のカニは横に歩きますが、アサヒガニは甲羅が縦長であるため、「前進・後退」が得意です。
これはカニの進化の過程において、ヤドカリからカニへと進化する途中の「原始的な形態」を残しているとも言われています。
縦長の体は、砂の中にズボッと潜り込む際に抵抗が少なく、非常に理にかなった形状なのです。
3. 味は「カニ」ではなく「伊勢海老」!?
アサヒガニの評価を一言で表すと、**「味はカニというより、エビに近い」**です。
これが、食通たちがアサヒガニを追い求める最大の理由です。
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身質: ズワイガニのような繊細な繊維ではなく、タラバガニや伊勢海老のような、プリッとした弾力のある太い繊維です。
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甘み: 非常に強く、濃厚な甘みがあります。
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カニ味噌: 量も多く、ウニのように濃厚でクリーミー。淡白な身と一緒に食べると、口の中で極上のソースとなります。
「カニの殻を被った伊勢海老」と表現されることもあり、一度食べると他のカニでは物足りなくなるというファンも多いのです。
4. 価格と旬、選び方
価格
漁獲量が少ないため、市場にはあまり出回らない「高級食材」です。
サイズにもよりますが、1杯あたり2,000円〜5,000円、大型で状態の良いものではそれ以上の値がつくこともあります。
特に国産(和歌山、高知、鹿児島など)は希少価値が高く高値で取引されます。
旬
産地によって異なりますが、一般的には**冬から春(11月〜5月頃)**が旬とされています。
ただし、初夏に産卵を控えて内子(卵)を持ったメスも絶品で、通の間では珍重されます。
選び方
アサヒガニは、死ぬと急激に味が落ちる(身が溶ける)のが早いです。
購入する際は、**「生きているもの」か、「活け締めされてすぐにボイル・冷凍されたもの」**を選ぶのが鉄則です。
また、持った時にずっしりと重みがあるものを選びましょう。
5. おすすめの食べ方
シンプル・イズ・ベスト。 アサヒガニの魅力を最大限に味わうなら、以下の2つがおすすめです。
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塩茹で・蒸しガニ 複雑な調理は不要です。 丸ごと茹でるか蒸すだけで、最高の御馳走になります。 殻が硬いので、キッチンバサミで豪快に縦に割って、身にかぶりついてください。
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味噌汁・鍋 良い出汁が出るため、半分に割って味噌汁に入れると、磯の香りが爆発します。
まとめ
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アサヒガニは、生の状態から「朝日」のように赤いのが特徴。
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縦長の体と平たい脚は、砂に潜るために進化した結果。
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カニなのに「前後に歩く」珍しい生態を持つ。
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味は伊勢海老に近く、濃厚な甘みと弾力が魅力の高級食材。
もし、鮮魚店や市場でこの「赤い彗星」を見かけたら、迷わず買いです。
そのユーモラスな見た目からは想像もつかない、洗練された極上の味があなたを待っています。
釣太郎より
南紀・和歌山エリアでも、底引き網漁などでアサヒガニが水揚げされることがあります。
地元の鮮魚店「釣太郎」周辺の市場でも、運が良ければ並んでいるかもしれません。
もし入手された場合は、カニの殻をも砕く頑丈なキッチンバサミがあると便利です。

