南紀の海は「干満差」が激しいことを知っていますか?
黒潮の影響を強く受ける和歌山県・南紀地方。
魚影が濃く、憧れの磯場も多いこのエリアは、釣り人にとっての聖地です。
しかし、その魅力の裏には大きな危険が潜んでいます。
それが「潮の干満差」です。
特に春や秋の「大潮」の時期には、干潮と満潮の水位差が最大で約200cm(2メートル)にも達することがあります。
2メートルと言えば、大人の身長を優に超える高さです。
干潮時には歩いて渡れた場所が、数時間後には完全に水没し、帰れなくなる「孤立事故」が後を絶ちません。
恐怖の「潮位上昇スピード」一覧表
「6時間かけて2メートル上がるなら、1時間あたり30センチくらいだろう」と単純計算していませんか?
実は、潮の満ち引きは一定の速度ではありません。
「上げ3分、下げ7分」などの言葉があるように、時間帯によって潮が動くスピードは劇的に変化します。
以下は、大潮で干満差が200cmあると仮定した場合の、干潮(ソコリ)からの経過時間と水位上昇の目安表です。
このスピード感を頭に叩き込んでください。
【大潮・干満差200cmの場合の潮位上昇シミュレーション】
| 干潮からの経過時間 | その1時間の水位上昇 | 干潮からの合計水位 | 状況と危険度 |
| 0時間〜1時間 | 約 14cm | 14cm | 【油断】 まだ足首程度。変化に気づきにくい。 |
| 1時間〜2時間 | 約 36cm | 50cm | 【注意】 膝下まで来る。流れが速くなり始める。 |
| 2時間〜3時間 | 約 50cm | 100cm | 【危険】 <span style=”color:red; font-weight:bold;”>1時間で50cm上昇!</span> 腰まで浸かる。 |
| 3時間〜4時間 | 約 50cm | 150cm | 【極めて危険】 <span style=”color:red; font-weight:bold;”>さらに50cm上昇!</span> 胸の高さ。帰還不能。 |
| 4時間〜5時間 | 約 36cm | 186cm | 【孤立】 ほぼ満潮に近い水位。波も高くなる。 |
| 5時間〜6時間 | 約 14cm | 200cm | 【満潮】 完全に水没。 |
※潮汐の「1/12法則(トゥエルブス・ルール)」に基づいた概算です。
地形や気圧配置により誤差が生じます。
魔の「中ダル」時間帯に注意せよ
上記の表で最も注目すべきは、**干潮から2時間後〜4時間後の「中間の2時間」**です。
この2時間だけで、なんと約1メートルも潮位が上昇します。
分速に直すと、1分間に約1cm近いペースで水面が上がってくる計算です。
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最初の1時間: 「あれ?ちょっと潮が満ちてきたかな?」
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3時間目: 「えっ!さっきまで乗っていた岩がもう沈んでる!」
このように、潮の動きは加速度的に早くなるため、気づいた時には手遅れになりやすいのです。
これを「時限爆弾」のように認識しておく必要があります。
南紀で安全に釣りを楽しむための鉄則
南紀の地磯やゴロタ浜で釣りをする際は、以下の3点を必ず守ってください。
- 退路の「一番低い場所」を把握する自分が立っている場所が安全でも、帰るルートの途中にある「窪地(ワンド)」が先に水没すれば、陸に戻れなくなります。
釣り座よりも、帰り道の水位を常に気にしてください。
- 「上げ3分」までに撤収を開始する表にある通り、干潮から2時間を過ぎると一気に水位が上がります。
「まだ大丈夫」と思わず、干潮から2時間経過した時点で、低い磯からは撤収を始めてください。
- ライフジャケットとスパイクシューズは必須万が一流された時の浮力確保はもちろん、濡れた磯は非常に滑りやすくなります。
装備は万全にして挑みましょう。
まとめ:自然のサイクルを侮るな
南紀の大潮は、想像を絶するパワーとスピードで景色を変えます。
「潮見表(タイドグラフ)」を確認するのは釣り人の義務ですが、単に満潮・干潮の「時刻」を
見るだけでなく、「潮位差(cm)」まで確認する癖をつけましょう。
爆釣のチャンスでもある大潮ですが、命あっての釣りです。
「早すぎる撤収」くらいが、南紀の磯ではちょうど良いのです。

