海面まで浮いてきているのに、サシエだけ見事に無視される。
そんな悔しい経験をしたフカセ釣り師は多いはずです。
相手は「磯の黒騎士」とも呼ばれる口太(クチブト)グレ。
彼らの最大の特徴であり、美しさの象徴でもあるあの**「青い瞳(ブルーアイ)」**には、
釣り人を悩ませる驚異的な能力が隠されているのかもしれません。
今回は、グレの視覚能力の秘密と、そこから導き出される「ハリスの太さ(号数)の正解」
について、科学的かつ実践的な視点で解説します。
1. 宝石のような「ブルーアイ」の正体とは?
釣り上げた瞬間、太陽光を受けて鮮やかなコバルトブルーに輝く口太グレの瞳。
この美しさから、ダイバーやアクアリストの間でも非常に人気があります。
しかし、釣り人にとってこの「青い目」は、脅威そのものです。
なぜ青く光るのか?
この青色は、色素(ペンキのような色)ではありません。
魚の目にある**「虹彩(こうさい)」**という部分に、光を反射する特殊な細胞(グアニン層
など)が並んでおり、それが光を干渉させて青く見せているのです。
これは「構造色」と呼ばれ、モルフォ蝶の羽やタマムシの色と同じ原理です。
グレは目がいいのか?
結論から言うと、グレの視力は人間で言う「0.1〜0.2程度」と言われています。
「なんだ、悪いじゃないか」と思うかもしれませんが、水中ではこれで十分すぎる数値です。
彼らの凄さは視力そのものよりも、**「動体視力」と「コントラスト(色の濃淡)を見分ける力」**にあります。
あの大きなレンズのような瞳は、わずかな違和感や、エサの不自然な動きを瞬時に見抜くために進化しているのです。
2. ハリスの太さで「あたり」が変わる2つの理由
「ハリスを2号から1.5号に落としたら、急に入れ食いになった」
これはフカセ釣りあるあるですが、なぜたった0.数ミリの差でこれほど反応が変わるのでしょうか?
理由は大きく分けて2つあります。
理由①:視覚的な「存在感」の消失
グレは色を見分ける能力があると言われています。
透明なハリスであっても、太ければ太いほど、光の屈折によって水中での「輪郭」がはっきりしてしまいます。
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2号(約0.235mm): 強度は安心だが、光を反射する面積が広く、スレたグレには「何か紐がついている」と見切られやすい。
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1.5号(約0.205mm): 標準的な太さ。強度と隠蔽性のバランスが良い。
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1号(約0.165mm): 非常に細く、水中での光の乱反射が最小限。グレの目から見ても「糸」として認識されにくくなる。
理由②:サシエの「動き」が変わる(最重要)
実は、視覚以上に重要なのがこれです。
ハリスが太いと、糸自体に「張り」や「コシ」がありすぎて、潮の流れに逆らってしまいます。
その結果、マキエは自然に流れているのに、サシエだけが微妙に突っ張ったり、不自然な沈下速度になったりします。
一方、1号クラスの細いハリスは「しなやか」です。
潮の流れに素直に馴染み、サシエがマキエと全く同じ動き(同調)をしやすくなります。
警戒心の強いグレは、この「完璧な同調」に騙されて口を使ってしまうのです。
3. 状況別:ハリス号数の使い分けガイド
では、常に細いハリスを使えば良いのかと言うと、そうではありません。
細いハリスは「食わせる力」は最強ですが、大型が来た時の「獲る力」は弱くなります。
以下の基準で使い分けるのがベストです。
【2号】(強気モード)
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状況: 朝マズメ・夕マズメの薄暗い時間帯、波気がある時、尾長グレが混じる時。
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理由: グレの視界が効きにくい状況なら、太くても食ってきます。切られるリスクを回避し、強引なやり取りができる2号が有利です。
【1.5号〜1.7号】(基本モード)
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状況: 日中の通常時、30cm〜40cmクラスが狙える時。
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理由: 最も汎用性が高い太さです。まずはここからスタートし、様子を見ましょう。
【1号〜1.2号】(勝負モード)
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状況: ピーカン(晴天無風)、潮が澄んでいる、魚は見えているのに食わない時、寒グレ期の低活性時。
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理由: いわゆる「激シブ」の状況を打破する切り札です。 ドラグを緩めに設定し、竿の弾力を最大限に使えば、40cmオーバーの口太グレでも十分に取り込めます。
4. まとめ:ブルーアイに見破られないために
口太グレの美しいブルーアイは、生き残るための高性能レーダーです。
彼らに見破られないためには、釣り人も知恵を絞らなければなりません。
「ハリスを落とすと切られるのが怖い」 その気持ちは痛いほど分かります。
しかし、**「食わなければ、切られることすら始まらない」**のも事実です。
もし次回の釣行でアタリが遠のいたら、勇気を出してハリスをワンランク細くしてみてください。
ウキが消し込むその瞬間の快感は、きっと恐怖心に打ち勝つはずです。

