「今日の釣果で、最高の魚料理を作るぞ!」
釣りから帰った後の楽しみといえば、なんといっても新鮮な魚を味わうことですよね。
刺身、塩焼き、煮付け…どんな料理にしようか考えるだけでワクワクします。
しかし、腕によりをかけて調理したはずなのに、
「なんだか生臭さが残る…」
「お店で食べるほど美味しくない…」と感じた経験はありませんか?
その原因、実は調理の腕前ではないかもしれません。
もし「魚の本当の美味しさは、キッチンに立つずっと前、釣ったその瞬間の行動でほぼ
決まっている」と言われたら、どう思われますか?
実は、釣り人が魚の味をコントロールできる領域は、釣った後の**「処理」と「調理」を合わせて、
全体のわずか25%**。
そして驚くべきことに、そのうちの80%、つまり魚全体の味の実に65%が「処理」にかかっているのです。
この記事では、あなたの釣果を”最高のご馳走”に変える「処理」の重要性と、
初心者でも今日から実践できる具体的な方法を徹底解説します。
なぜ「処理」が魚の味の65%も左右するのか?
そもそも魚の味は、様々な要因で決まります。
それを大きく分けると、以下のようになります。
- 釣り人がコントロールできない領域(75%)
- 魚の種類、育った環境、食べていたエサ、季節、個体差など
- 釣り人がコントロールできる領域(25%)
- 釣った直後の**「処理」**
- 持ち帰ってからの**「調理」**
どんなにポテンシャルの高い魚が釣れても、釣った後の扱いが悪ければ、その価値は半減してしまいます。
私たちが介入できる25%の中でも、「処理」が8割(全体でみれば65%)を占めるのには、科学的な理由があるのです。
- 臭みの原因は「血」にあるから 魚の生臭さの最大の原因は、身に残った「血」です。血は時間と共に酸化し、不快な臭みを発生させます。釣った直後に適切に血を抜くことで、魚本来のクリアな旨味だけを味わうことができます。
- 身の劣化は「暴れること」で加速するから 魚は釣られた後、暴れることでエネルギー(ATPという物質)を大量に消費します。このATPが急激に失われると、死後硬直が早く始まり、身が硬くなったり、旨味成分が作られる前に劣化が進んだりしてしまいます。即座に「締める」ことで、このエネルギー消費を最小限に食い止めます。
- 「旨味」は作られるものだから 魚の旨味成分である「イノシン酸」は、実は死んだ直後がピークではありません。ATPが分解される過程でゆっくりと生成され、死後硬直が解ける頃に最も多くなります。適切な処理と保存(熟成)を行うことで、この旨味を最大限に引き出すことができるのです。
つまり、調理とは「最高の状態に仕上げられた素材」を活かす最終工程。
味の土台となる65%を占める「処理」がしっかりしていなければ、どんな調理法も効果が半減してしまうのです。
釣果が劇的に変わる!究極の処理5ステップ
「なんだか難しそう…」と感じる必要はありません。
以下の5つのステップを順番に行うだけで、あなたの魚は驚くほど美味しくなります。
ステップ1:即締め(脳締め)
魚が釣れたら、まずは即座に締め、暴れさせないことが最重要です。
- 目的: 身のエネルギー消費を止め、劣化を防ぐ。
- 方法: ナイフの先端や専用のピックを使い、魚の目の少し上あたりにある脳を突きます。魚の口が「カクン」と開き、全身の力が抜ければ成功の合図です。
ステップ2:血抜き
締めたらすぐに血抜きへ。臭みをなくし、美しい身の色を保つための必須作業です。
- 目的: 臭みの元となる血を完全に抜く。
- 方法:
- エラ蓋を開け、エラと体を繋いでいる膜をナイフで切ります。
- 背骨の下にある動脈を断ち切るように、エラの付け根に切り込みを入れます。
- 海水を入れたバケツに頭から入れ、尻尾を持って数回振る(フリフリ血抜き)と、効率よく血が抜けます。
ステップ3:神経締め(さらなる高みへ)
これは必須ではありませんが、実践すればプロの領域に近づきます。
特に大型魚や、数日熟成させたい場合に絶大な効果を発揮します。
- 目的: 神経を破壊し、死後硬直の開始を大幅に遅らせる。
- 方法: 魚の眉間や尾の付け根から専用のワイヤーを脊椎に沿って通し、神経を破壊します。
ステップ4:内臓・エラの処理
魚の腐敗は内臓から始まります。可能であれば、釣り場で処理してしまうのがベストです。
- 目的: 腐敗を早める内臓や雑菌の多いエラを取り除き、鮮度を保つ。
- 方法: 腹を肛門からエラ下まで切り開き、内臓とエラを取り除きます。この時、腹腔内の血合い(背骨に沿った赤い部分)を歯ブラシなどで綺麗に洗い流すのがポイントです。
ステップ5:適切な冷却・保存
最後は、最高の状態で持ち帰るための冷却です。ここでの一手間が、最後の味を決定づけます。
- 目的: 魚体の温度を素早く下げ、菌の繁殖を抑える。
- 方法:
- クーラーボックスには、氷と海水を混ぜた「潮氷」を作るのが理想です。真水は浸透圧で身が水っぽくなるので避けましょう。
- 処理した魚をビニール袋などに入れ、直接氷に触れないようにして潮氷に浸けます。魚の身が氷焼けするのを防ぎます。
よくある質問 Q&A
Q1. アジやイワシのような小さな魚でも、全部やるべき?
A1. 「血抜き」と「冷却」は、どんな魚でも行うことを強く推奨します。
締める作業は数が多いと大変ですが、バケツの中でエラを切って血抜きするだけでも味は格段に良くなります。
Q2. 道具は何を揃えればいい?
A2. まずは切れ味の良い「ナイフ」と「ハサミ」、そして血合いを掃除するための「歯ブラシ」があれば十分です。
これに「神経締めワイヤー」と「ピック」があれば完璧です。
Q3. 釣り場が汚せない場合、どこまでやればいい?
A3. 最低限、「即締め」とクーラーボックス内での「血抜き」(袋に入れるなど工夫する)だけでも実践してください。
内臓処理は家に帰ってからでも構いませんが、できるだけ早く行うのが理想です。
まとめ:最高の魚の味は、あなたの手で作り出せる
今回は、釣った魚の味の65%が「処理」で決まるという事実と、その具体的な方法をご紹介しました。
- 魚の味は調理の腕より、釣った直後の「処理」でほぼ決まる。
- 「臭み」「劣化」「旨味」の3つの観点から処理は科学的に重要。
- 【締める→血抜き→処理→冷却】の基本ステップをマスターしよう。
次回の釣行からは、ぜひ釣れた一匹に愛情を込めて、この「処理」を施してみてください。
今までと同じ魚のはずなのに、その透き通るような旨味と食感に、あなた自身が一番驚くはずです。
最高の素材を自分の手で作り上げ、食卓を感動で満たしましょう!


