深い青の世界。
そこには、弱肉強食という厳しい掟がある。
イサキは今日も群れとともに海を泳いでいた。
光が差し込む水面を背に、潮の流れに身を任せながら、静かに餌を探していた。
しかし、その静寂は一瞬で崩れ去った。
「来た……!」
本能が叫ぶ。
背後から忍び寄る影。
鋭い歯を持つハンター――カンパチか、それともサメか。
イサキは咄嗟に反転し、全力で泳ぎ出した。
しかし、捕食者はすでにその動きを読んでいた。
次の瞬間、激痛が走る。
尾が……ない。
襲いかかる恐怖に耐えながら、イサキは必死に泳ぎ続けた。
群れはすでに遥か彼方へ消え、頼れる仲間はいない。
傷口から滲み出る血が、さらに別の捕食者を呼び寄せる。
「ここで終わるのか……?」
そう思った瞬間、不意に潮の流れが変わった。
大きな波がイサキを押し流し、岩陰へと導いた。
捕食者は追ってこない。
「……助かったのか?」
だが、傷は深く、体力も限界だった。
このまま動けなくなれば、次の敵がやってくるのは時間の問題。
海の中は、決して生易しい世界ではない。
今日を生き延びても、明日があるとは限らない。
それが、この世界の掟なのだから。