魚の血液量には種ごとに違いがあり、その量は生息環境や行動、生理的特性と密接に関係しています。
以下に血液が多い魚と少ない魚を5種ずつ挙げ、それぞれの特徴、理由、そしてその生態学的な
意味を解説します。
血液が多い魚(5種)
- カツオ(鰹)
- 特徴: カツオは高速で長距離を泳ぐ回遊魚で、筋肉への酸素供給が必要なため血液量が多い。
- 理由: 筋肉の多くが赤筋で構成され、酸素を使う有酸素運動を主とするため、血液量が多くなる。
- 意味: 血液量の多さにより、速い泳ぎと持久力を可能にし、捕食や移動効率を高めている。
- マグロ(鮪)
- 特徴: カツオ同様、高速で泳ぎ続ける回遊魚であり、赤筋が多い。
- 理由: 体温を周囲の水温より高く保つ恒温性を持つため、血液が温度調節にも使われる。
- 意味: 遠洋回遊や高速捕食を支えるために血液循環が重要。
- サバ(鯖)
- 特徴: 小型の回遊魚で、活発に泳ぎ回る生活を送る。
- 理由: 活発な遊泳活動のために赤筋が発達し、血液量が多い。
- 意味: 高速移動とエサを効率的に捕食するためのエネルギー供給が可能になる。
- アジ(鰺)
- 特徴: 近海を遊泳する魚だが、活発に動く性質を持つ。
- 理由: 遊泳性で運動量が多いため、筋肉への酸素供給が必要。
- 意味: 血液量が多いことで、群れを成して長時間泳ぐことが可能。
- ブリ(鰤)
- 特徴: 回遊性の大型魚で、筋肉の大部分が赤筋で構成されている。
- 理由: 高速で泳ぐ回遊性の生活を送るために酸素供給量を増やす必要がある。
- 意味: 血液が多いことで、捕食や遠距離移動に適応している。
血液が少ない魚(5種)
- ヒラメ(平目)
- 特徴: 底生魚で、あまり動き回らず海底でじっとしていることが多い。
- 理由: 遊泳活動が少なく、筋肉の多くが白筋で構成されるため、血液量が少ない。
- 意味: 必要以上の酸素供給が不要で、エネルギー消費を抑えられる。
- カレイ(鰈)
- 特徴: ヒラメと同様、底生魚で海底に張り付いて生活する。
- 理由: 動きが少なく、血液量を多く持つ必要がない。
- 意味: エネルギーを節約し、底生生活に適応している。
- フグ(河豚)
- 特徴: 比較的ゆっくりした動きで、活発に泳ぐことが少ない。
- 理由: 防御能力(膨らむことや毒)によって捕食者から身を守るため、運動量が少なく済む。
- 意味: 血液量が少ないことで代謝を抑え、効率的な生存戦略を実現している。
- タコ(蛸)※魚ではないが重要な例
- 特徴: 活動的ではあるが、短い運動を繰り返す生活をする。
- 理由: 赤血球に酸素を運ぶヘモグロビンではなく、銅を含むヘモシアニンを使うため、酸素運搬効率が低く、血液循環が効率的ではない。
- 意味: 血液循環の進化は抑えられ、他の防御機能にリソースを割いている。
- イシダイ(石鯛)
- 特徴: 岩礁帯で生活し、比較的ゆっくり動く魚。
- 理由: 動きが限られ、血液量を多く持つ必要がない。
- 意味: 血液量が少ないことで、必要最小限のエネルギーで生活可能。
なぜ血液量に違いがあるのか?
血液量の違いは主に以下の要因によって決まります。
- 筋肉の種類(赤筋 vs 白筋):
- 赤筋(持久力・有酸素運動に強い)を多く持つ魚は血液量が多い。
- 白筋(瞬発力・無酸素運動に強い)が主体の魚は血液量が少ない。
- 生活環境:
- 遊泳性の高い魚は酸素を多く必要とし、血液量が多い。
- 底生魚や移動の少ない魚は酸素供給量が少なく済むため血液量が少ない。
- 体温調節:
- マグロやブリのように恒温性を持つ魚は血液が重要な役割を果たし、量が多い。
血液量の違いが持つ意味
- エネルギー効率:
血液量が多い魚は酸素供給が豊富で持久力がある一方、エネルギー消費が大きい。逆に血液量が少ない魚はエネルギー消費が少なく、効率的に生活できる。 - 環境への適応:
血液量の違いは生息環境や捕食・被食関係への適応として進化しており、それぞれの生態的ニッチを反映している。 - 鮮度や食味への影響:
血液量が多い魚は腐敗が早いため、エラや血液の除去が鮮度維持において重要。少ない魚は腐敗の進行が遅く、保存性が高い。
このように、血液量の違いは魚の生態や進化、さらには漁業や調理にも大きく影響を与えています。


