180cmから220cm。
これは南紀エリアにおける大潮の日の潮位差です。
全国的に見ても、この数字は間違いなく「トップクラス」に大きい。
日本海側の潮位差がせいぜい30cmから40cm程度であることを考えれば、その異常さが分かるはずです。
なぜ、南紀だけこれほど大きく海が動くのか。
そして、この「差」は我々釣り人にとって何を意味するのか。 今回はその核心に触れてみます。
なぜ南紀の潮はこれほど動くのか
答えは単純明快、「太平洋の最前線だから」です。
日本海は狭い入り口で閉ざされた、いわば「大きな湖」のような地形をしています。
そのため、月の引力で海面が引っ張られても、水が出入りしにくく、大きな波になりにくい。
対してここ南紀は、広大な太平洋に対して「むき出し」の状態です。
遮るものは何もない。
月の引力で持ち上げられた太平洋全体の海水が、ダイレクトに南紀の海岸線に押し寄せてくるわけです。
さらに黒潮の蛇行や接岸といった要素も絡み合い、この圧倒的な潮位差が生まれます。
南紀の海は、地球の呼吸をそのまま受け止めているのです。
「潮位差が大きい」=「釣れる」理由
では、この2メートル近い水位差は、現場で何を意味するのか。
それは「強烈な海水の移動」です。 2メートルもの高さの海水が、わずか6時間ほどで入れ替わる。
これだけの質量の水が動けば、当然そこには「川」のような強い流れ(潮流)が生まれます。
この流れこそが、魚のスイッチを入れる最大の要因です。
潮が動けば、海底のプランクトンが舞い上がる。
それを食べる小魚が動き、それを狙う大型魚が狂ったように捕食を始める。
南紀で「潮が止まると釣れない」と言われるのは、単なるジンクスではなく、物理的な事実なのです。
戦略が変わる、景色が変わる
もう一つ、忘れてはならないのが「地形の変化」です。
満潮時には海の中に沈んでいた岩礁(シモリ)が、干潮時には完全に顔を出す。
これほど景色が変わるエリアはそう多くありません。
干潮のタイミングだけ渡れる「幻の磯」や、潮が引いた時だけ狙える「竿抜けポイント」が存在するということ。
逆に言えば、夢中になって釣っていると、気づけば帰り道が水没して取り残される危険もあるということ。
この「180〜220cm」という数字を頭に入れておくだけで、攻め方、守り方、すべての安全管理が変わってきます。
南紀の海は、ただ広いだけじゃない。
上下にこれだけダイナミックに動いているということを、肌で感じて竿を出してみてください。
海が生きて動いていることを、強烈に実感できるはずです。

